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アミ・ダンファンス

毎日1000文字を目標に続きを書いています。

次回の更新は明後日です。

 無意識の海に沈んでいた意識が、ゆっくりと現実世界に浮かび上がってくる。


 体はまだ眠っているが、意識だけ一足先に目覚めている状態。


(なんだ、これ……。全部、夢だったのか?)


 一瞬、そんなことを考えてしまった。


 自分の部屋で朝までゲームをして、眠くなってきたので、大学をサボって仮眠を取ることにして――――そのまま、まるまる二十四時間、爆睡してしまったのだろうか?


 閉じたマブタ越しに感じる陽の光は、今の時間が朝であることを俺に告げている。


 今まで、二十四時間も眠り続けたことは一度も無いのだが、徹夜で疲れていたと考えれば、あり得ないことではないのだろうか?


 今、俺が目を開けて、見慣れた安アパートの天井が映れば、すべてが夢だったことになる。


 だが――――


 目を開けるまでもなく、俺はこれが夢オチではないことを確信してしまった。


 俺は少しだけ仮眠を取るつもりだったので、床に敷いた座布団の上に横になり、薄いタオルケットを腹にかけて眠りについたのだ。でも、今の俺はちゃんとしたベッドの上で横になり、温かい毛布にくるまっている。つまり、ここは安アパートの俺の部屋ではないのだ。


(夢オチじゃなかったのか……)


 だとすると、俺はプリムラの仕事部屋から、この場所に転移した可能性が高い。


 耳を澄ますと、壁を隔てた向こう側で、誰かが動き回っているような物音が聞こえた。


 なんとなく、目を開けて現実を直視してしまうのが怖くて、俺が完全に目覚めようとせず、毛布にくるまってあれこれ思案していると、


「あーもー。まだ寝てる」


 木製の扉を開く音がして、呆れたような女性の声が聞こえた。


「ほら、シノブ。もう朝だよ。起きなさい」


 声の主はそう言うと、遠慮なく俺に近づいてきて、ベッドの上に身を乗り出し、カーテンを開けようとした。


(兄貴のノートに書いてあったな)


 兄貴曰く「幼馴染ヒロインが朝起こしに来る固定イベント」らしい。


 だとすると、今、俺に覆いかぶさり窓を開けようとしているのは、俺の幼馴染なのだろう。先程の物言い――――口調の気安さを考えても間違いないはずだ。


 名前はたしか「アミ・ダンファンス」だったか。


 俺が恐るおそる薄目を開けると――――


(むっ……!)


 目の前、五センチほどの距離に、女性の胸があった。


 勿論、服は着ている。着ているが……至近距離なので、めちゃくちゃ迫力がある。


 どうやら、俺の幼馴染は窓を開けるのに苦戦しているようだ。胸が俺の顔にくっつきそうなほどに、身を乗り出している。


 視線を動かすと、俺の左手の位置には、ベッドに膝立ちになった下半身があった。勿論、服は着ている。


 ――――尻を触ると怒られるが、太ももを触っても驚かれるだけ。


 ここで、再び兄貴のノートに書いてあった情報を思い出した。


(……確かめてみるか?)


 もし、兄貴のノートに書いてあったとおりの結果になれば、ノートに書いてある他の情報の信憑性も、担保されることになる。たとえ怒られても、寝惚けたふりに徹すれば、関係が壊れることはないだろう。だって、幼馴染なのだから。


 そう思って、俺は左手を伸ばしかけたものの、


「……」


 寸でのところで、思い止まった。

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