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尻を触ると怒られるので気つけろ

毎日1000文字を目標に続きを書いています。

次回の更新は明後日です。

 一年目の一学期、一日目。


 主人公の幼馴染らしい女子に起こされて目覚める。ゲームにありがちな、幼馴染ヒロインが朝起こしにくる固定イベントだと思われる。


 名前はアミ・ダンファンス。この世界のルールや常識について、分からないことがあったら、彼女にそれとなく尋ねるとよい。


 ちなみに、この時、尻を触ると怒られるが、太ももを撫でる程度なら、びっくりするだけで特に怒られない。さすがは幼馴染といったところか。


     *


(……見なかったことにしよう)


 俺は、兄貴の攻略日誌をそっと閉じた。


 兄貴は、いったい、何をやっているのか。


 人には「ゲームをクリアするつもりでやってみろ」とか「辛かったら諦めてもいい」などとアドバイスしていたくせに、自分は主人公の立場を悪用して、幼馴染とのスキンシップを満喫しているではないか。尻、触ってんじゃねーぞ。


「兄貴はいつ、これを書いたんですか?」


「夜というか、眠っている間ですね。私、任意の人の意識をこの部屋に召喚することができるので、ジュンさんが向こうの世界で眠っている間に、ここに来ていただいていたんです」


 そして、兄貴はこの部屋に呼び出される度に、向こうの世界で起きた出来事を一つ一つ思い出して、ノートに書き残していたらしい。


「ちなみに、ジュンさんは数日おきにこの部屋にきていたんですけど……。もし、仮にですけど、シノブさんが同じことをするとしたら、何日おきがいいですか?」


「もし、俺がやるとしたら、毎日ですね」


 プリムラからの問い掛けに、俺は間髪入れずに即答した。


 俺は、兄貴のように要点を効率よくまとめることができないし、記憶力もあまり良くないので、覚えていることを片っ端からノートに書き記さないと駄目だろう。


 それに、眠っている間に、この場所で別作業をできるのであれば、それを利用しない手はない。いくら無限ループしているとはいえ、時間は有限なのだ。同じことを何回も繰り返すのは時間の無駄でしかない。


「あらぁ、毎日ですかぁ……。シノブさん、毎日、私に会いたいんですか? 困っちゃいますねぇ」

「また、調子に乗ってますね?」


「ひっ……! ごめ、ごめんなざい!」 


 俺が「またやるぞ」と言わんばかりに頬をつねるジェスチャーをすると、プリムラは悲鳴を上げて、俺から距離を取った。


(やっぱり、この扱い方で正解なのか)


 いくら雑に扱えるキャラとはいえ、神を自称する上位存在を、ここまで格下扱いしてよいのだろうか? 


 ――――まあ、いいか。


 俺は兄貴の残してくれたノートの、初日の部分の書き込みに一通り目を通した。


 世界がループしていて、世界の住人がループを自覚していないのであれば、基本的に序盤は毎回同じことが起こるはずだ。


 未来が変わるのは、世界がループしていることを知っている俺が、何らかのイレギュラーな行動を取って、風が吹けば桶屋が儲かる的なバタフライエフェクトが発生した時だろう。


 一個人の行動で、世界にそこまで大きな影響を及ぼせるとは思えないが……。


 ――――でもまあ、VRの激レアなゲームを体験できると思えば、試しにやってみる価値はあるのかもしれない。

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