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レクシア -de quodam lexicone fabula-  作者: Nekke
第2章 ルーメル編
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31/35

0030 登録

お久しぶりです。

今日から月金で投稿を再開します。

「それじゃあ、よろしくお願いします」

 クレアさんが、受付嬢に何やら書類を渡しているのが見える。あのまますぐに、冒険者登録をすることになった。

「承りました。少々お待ちください」

 受付嬢はそう言うと、慣れた手つきで書類を整理し始めた。

 私はその間、ギルドの中をこっそり見回す。


 相変わらず、人が多い。

 昼間だからか、依頼を受けに来た冒険者や、討伐から戻ってきたばかりらしい人たちでかなり賑わっている。鎧の擦れる音、酒場の方から聞こえる笑い声、紙をめくる音。それらが全部混ざって、不思議と落ち着く騒がしさになっていた。


「緊張してる?」

 隣から、クレアさんが小さく笑いながら聞いてきた。

「……ちょっとだけ」

 冒険者になる、ただそれだけなのに、不思議な高揚感を感じていた。同時に、緊張も。


「大丈夫ですよ。冒険者登録くらいなら、そこまで構えなくても」

「…本当に?」

「本当に。あっでも、レクシアさんの鑑定結果だったら、少し気をつけたほうがいいかも」

「えっ」

「冗談ですよ。もし何かあっても、私がいますから」

 冗談だとしても、心臓には悪い。


 そうこうしているうちに、受付嬢が何かを確認するように書類へ目を落とし——ぴたりと動きを止めた。

「……え?」

 小さな声だったが、今の私にはやけにはっきり聞こえてしまった。


「どうかしましたか?」

 クレアさんが自然な調子で尋ねる。

「あ、いえ……その……」

 受付嬢は一瞬だけこちらを見て、慌てて咳払いをした。

「失礼しました。少し珍しい結果でしたので」

 なんとなく分かってたとはいえ、やっぱり怖いものは怖いね。


 受付嬢は気を取り直すように書類を整えると、改めてこちらへ向き直った。

「それでは、冒険者登録について簡単に説明いたしますね」

「はい」

「まず、冒険者ランクは下からF、E、D、C、B、A、Sとなっております。初回登録の場合は、基本的にFランクからのスタートです」

 やっぱりそういうのあるんだ。ちょっとだけワクワクする。


「依頼を達成することで功績が認められ、ランクが上がっていきます。また、一定ランク以上になりますと、受けられる依頼や入れる地域も増えます」

「地域?」

「はい。危険区域などですね。あとは、一部の街では高ランク冒険者にのみ解放される施設もあります」

 なるほど、身分証みたいな意味もあるのか。


「それから」

 受付嬢はそこで少しだけ声を潜めた。

「冒険者ギルドでは、実力主義が基本です」

「実力主義?」

「年齢や身分に関係なく、実力がある方は評価されます。逆に言えば、実力が無ければ軽く見られることもあります」

 ……ああ、何となく分かる気がする。冒険者って、命を懸ける仕事だもんね。


「そのため、ギルド内での揉め事については、基本的に自己責任となります。もちろん、殺傷沙汰などは厳罰ですが」

 受付嬢は慣れた様子で説明を続ける。

「また、ギルドカードには簡易的な身分証明の機能もありますので、紛失にはお気をつけください」

「分かりました」

 ……思ったより大事なものなのか。失くしそうで怖いな、私のことだし。


「では最後に、登録用の魔力刻印をお願いします」

「魔力刻印?」

「はい。このカードに魔力を登録していただきます。本人確認用ですね」

 差し出されたのは、手のひらほどの白いプレートだった。シンプルなデザインで、冒険者ギルドの意匠が背面に描かれている。


「こちらに魔力を流してください」

「……分かりました」

 私は恐る恐るカードを受け取る。見た目はただの板みたいだけど、触れるとほんの少しだけ魔力の流れを感じる。

 そのまま、指先から少量の魔力を流し込む。

 すると、白かったプレートの表面に淡い光が走った。

 縁の色が茶色に変化し、まるで水面に文字が浮かび上がるみたいに、ゆっくりと情報が刻まれていく。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

レクシア

ランク:F

所属:ルーメル冒険者ギルド

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「おお……」

 思わず声が漏れる。これで、冒険者の始まりって感じがする。

「縁の色はランクを表します。ランクFから順に、茶色、緑、水色、青、黄色、橙色、赤です」

 へえ、分かりやすくていいね。


「さて、全ての手続きが完了したので、これで登録完了です」

 受付嬢が微笑む。

「これでレクシアさんも正式に冒険者ですね!おめでとうございます」

「このまま、パーティ登録も行いますか?」

 …パーティ登録?

 私がきょとんとしていると、クレアさんがすかさず口を開く。

「お願いします。私の、『黎明の剣』に。私はパーティーリーダーじゃないので、仮登録で」

「承知しました。少々お待ちください」


 そう言って、受付嬢は奥に入って、少し大きめの魔道具のようなものを取り出した。

「こちらに、先ほどのギルドカードを置いてください」

 指示された場所にギルドカードを置くと、その反対側にクレアさんが同じようにギルドカードを置いているのが見えた。縁の色は青。ランクCだ。

 受付嬢が魔道具を操作するのを終えると、二人のギルドカードが淡く光った。

「それでは、確認してみてください」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

レクシア

ランク:F

所属:ルーメル冒険者ギルド

パーティー:黎明の剣(仮)

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 カードを見つめながら、私は小さく瞬きをした。

「……パーティー」

 口に出してみると、なんだか急に実感が湧いてくる。

 冒険者になっただけじゃない。ちゃんと、誰かと一緒に戦う側に入ったんだ。

「嫌でしたか?」

 クレアさんが少しだけ不安そうにこちらを見る。


「いえ、そんなことないです」

 慌てて首を振る。

「その……なんだか、感慨深くって」

「ふふ、それならよかったです」

 クレアさんはどこか嬉しそうに微笑んだ。

「とはいえ、仮登録ですからね。本登録にはパーティーリーダーのローディスさんの承認が必要です」

「なるほど、だから"仮"なんですね」

「そういうことです」


「…では、これで全て完了となります」

 受付嬢がぺこりと頭を下げる。

「今後とも、ルーメル冒険者ギルドをよろしくお願いいたします」

 こうして。

 私は正式に、冒険者になった。

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