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レクシア -de quodam lexicone fabula-  作者: Nekke
第2章 ルーメル編
28/29

0027 依頼

前回は諸事情で投稿できませんでした。遅れましたが、今回は投稿します。

なお、諸事情で今まで出てきた「白灯亭」を、全て「燈柏亭」に変更します。お騒がせしますが、どうぞ宜しくお願いします。

 ……空気が重い。

 グランディス家当主——アルディウス・グランディスの視線は、静かに、しかし確実にこちらを射抜いていた。逃げ場はない。そう理解できるだけの圧が、この部屋には満ちている。


「…詳しく、聞いても良いか?」

 嘘は通じない。もう、それは分かっている。

 だからこそ、

「それがあなたが言う『禁書庫』かどうかは、分かりません」

 私は一度、言葉を区切った。

「でも、それに近いものなら一つ知っています」


 沈黙。それは、たった数秒のはずなのに、やけに長く感じられた。

 アルディウスさんは何も言わない。ただ、こちらを見ているだけだ。その視線が、言葉よりも雄弁に語っていた。——続きを言え、と。

「森の中、それなりに手前の方に、図書館のような場所があるんです。すごく広い建物なのに、外からはほとんど分からないから、見つけにくいかもしれません」

 言ってみて思ったけど、そういえば出発する時もなぜか目立たないように感じたな。なんでだろ?


「認識阻害、か」

 認識阻害?聞いたことないな、どうやって使うんだろう?

「周囲から認識されにくくなる魔法。なるほど、【隠蔽】だと思ってずっと調べてきたが、どうやら的外れだったようだな。道理で見つからないはずだ。となると、既に見つけたことがある人物が必要だが…」

 そこで、私に視線が向く。

「…何でしょうか?」

 状況的に分かりきってはいるけど、一応聞いておく。

「3日後に調査隊を送る。『禁書庫』への道案内を頼めるだろうか?」

 3日後か……その頃までには、蹂躙(スタンピード)の討伐も終わってるかな?

「了解しました。他には何かございますか?」

「感謝する。3日後の朝、指定した場所に使いの者を送る。どこか都合が合う場所はあるか?」

「じゃあ、燈柏亭の前で」

「燈柏亭か…承知した。使いの者を送ろう」

 一泊置いて、再び口を開く。

「今日のところは少し時間を使い過ぎたな。続きはまた会った時としよう」

 そう言って、手元にあった書類へと目線を動かす。それと同時に、マーサさんが席を立つ。私は、席を立つのが少し出遅れてしまった。






 あれからは特に何事もなく燈柏亭に帰ってこれた。色々あって、帰った頃にはもう夕方になってた。でもやっぱり平和が一番だね。

 ベッドに深く腰を下ろし、今日一日をぼんやりと振り返る。神殿に入って、なぜか追われることになって、そこから貴族の家に連れられて尋問のようなことをされて。ただ街を冒険しただけなのに、オーガを討伐した時と同じくらい疲れてしまった。もう二度と、街に冒険なんかするもんか。

 そう思っていると、不意に銀色の栞が挟まっているのが見えた。ノーモスさんに貰った栞…最近は忙しくて、全然気にしていられなかった。…今回の件は、迷惑をかけてしまうかもしれないな。心の中で謝っておく。


 さて、もう疲れたし、今日はもうゆっくり休もうかな。






 窓際でコーヒーを飲みながら、ノーモスはぼんやりと物思いにふけっていた。

 窓の外では、夕暮れがゆっくりと夜へと沈みつつあった。図書館の高い窓から差し込む光は、どこか現実味が薄く、時間の流れすら曖昧にしているようだった。

 湯気の立つカップを手にしたまま、ノーモスは視線を遠くへと向ける。


「……暗いな」

 ぽつりと呟く。

 何が暗いのかは、自分でも分からなかった。レクシアが…あの白い髪の少女が、歩むであろう道かもしれない。彼は、この図書館の行く末を予期しているのかもしれない。あるいは——


 溜まった感情を晴らすために、中庭へ出る。感情の赴くままに言葉を紡いで、いつものように魔法を放つ。

「光よ、全てを照らし癒すものよ」

 感情は糸だ。糸を紡いで、外に流していく。

「その証には輝きありて、それが照らすはかの者」

 そう、ただ一言で言うなら…

「闇をも破る盾となり、かの者を守れ」

 私はただ、あの子を守りたいんだろう。

「ルミナプロテクト」

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