0027 依頼
前回は諸事情で投稿できませんでした。遅れましたが、今回は投稿します。
なお、諸事情で今まで出てきた「白灯亭」を、全て「燈柏亭」に変更します。お騒がせしますが、どうぞ宜しくお願いします。
……空気が重い。
グランディス家当主——アルディウス・グランディスの視線は、静かに、しかし確実にこちらを射抜いていた。逃げ場はない。そう理解できるだけの圧が、この部屋には満ちている。
「…詳しく、聞いても良いか?」
嘘は通じない。もう、それは分かっている。
だからこそ、
「それがあなたが言う『禁書庫』かどうかは、分かりません」
私は一度、言葉を区切った。
「でも、それに近いものなら一つ知っています」
沈黙。それは、たった数秒のはずなのに、やけに長く感じられた。
アルディウスさんは何も言わない。ただ、こちらを見ているだけだ。その視線が、言葉よりも雄弁に語っていた。——続きを言え、と。
「森の中、それなりに手前の方に、図書館のような場所があるんです。すごく広い建物なのに、外からはほとんど分からないから、見つけにくいかもしれません」
言ってみて思ったけど、そういえば出発する時もなぜか目立たないように感じたな。なんでだろ?
「認識阻害、か」
認識阻害?聞いたことないな、どうやって使うんだろう?
「周囲から認識されにくくなる魔法。なるほど、【隠蔽】だと思ってずっと調べてきたが、どうやら的外れだったようだな。道理で見つからないはずだ。となると、既に見つけたことがある人物が必要だが…」
そこで、私に視線が向く。
「…何でしょうか?」
状況的に分かりきってはいるけど、一応聞いておく。
「3日後に調査隊を送る。『禁書庫』への道案内を頼めるだろうか?」
3日後か……その頃までには、蹂躙の討伐も終わってるかな?
「了解しました。他には何かございますか?」
「感謝する。3日後の朝、指定した場所に使いの者を送る。どこか都合が合う場所はあるか?」
「じゃあ、燈柏亭の前で」
「燈柏亭か…承知した。使いの者を送ろう」
一泊置いて、再び口を開く。
「今日のところは少し時間を使い過ぎたな。続きはまた会った時としよう」
そう言って、手元にあった書類へと目線を動かす。それと同時に、マーサさんが席を立つ。私は、席を立つのが少し出遅れてしまった。
あれからは特に何事もなく燈柏亭に帰ってこれた。色々あって、帰った頃にはもう夕方になってた。でもやっぱり平和が一番だね。
ベッドに深く腰を下ろし、今日一日をぼんやりと振り返る。神殿に入って、なぜか追われることになって、そこから貴族の家に連れられて尋問のようなことをされて。ただ街を冒険しただけなのに、オーガを討伐した時と同じくらい疲れてしまった。もう二度と、街に冒険なんかするもんか。
そう思っていると、不意に銀色の栞が挟まっているのが見えた。ノーモスさんに貰った栞…最近は忙しくて、全然気にしていられなかった。…今回の件は、迷惑をかけてしまうかもしれないな。心の中で謝っておく。
さて、もう疲れたし、今日はもうゆっくり休もうかな。
窓際でコーヒーを飲みながら、ノーモスはぼんやりと物思いにふけっていた。
窓の外では、夕暮れがゆっくりと夜へと沈みつつあった。図書館の高い窓から差し込む光は、どこか現実味が薄く、時間の流れすら曖昧にしているようだった。
湯気の立つカップを手にしたまま、ノーモスは視線を遠くへと向ける。
「……暗いな」
ぽつりと呟く。
何が暗いのかは、自分でも分からなかった。レクシアが…あの白い髪の少女が、歩むであろう道かもしれない。彼は、この図書館の行く末を予期しているのかもしれない。あるいは——
溜まった感情を晴らすために、中庭へ出る。感情の赴くままに言葉を紡いで、いつものように魔法を放つ。
「光よ、全てを照らし癒すものよ」
感情は糸だ。糸を紡いで、外に流していく。
「その証には輝きありて、それが照らすはかの者」
そう、ただ一言で言うなら…
「闇をも破る盾となり、かの者を守れ」
私はただ、あの子を守りたいんだろう。
「ルミナプロテクト」




