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レクシア -de quodam lexicone fabula-  作者: Nekke
第2章 ルーメル編
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0024 噂

 目を覚ました時、窓から差し込む光はすでに少し傾いていた。

 ……ちょっと、寝過ぎちゃったかな。

 体を起こすと、少しだけ頭がぼんやりしている。けれど、魔力の感覚はかなり戻っていた。軽く手を握ると、指先にしっかりと力が入る。

 なんとなく外に出てみる。…そういえば、クレアさんからもらったお金もあるし、時間はちょっと遅いけど何か食べに行こうかな。

 外に出ると、街は活気に満ちていた。討伐隊があったから冒険者はいないけれど、それでもなお商人や職人たちが行き交っていて、人の流れが途切れることはない。私もその流れに乗って道を横切っていく。


 しばらく歩いていると、通りの一角に屋台が並んでいる場所があった。焼いた肉の匂いに、香辛料の刺激的な香りが混ざって、自然と足が止まる。

 しばらく迷って、串焼きのお店に決めた。

「これ、ください」

「あいよ」

 串焼きを一本買う。受け取ったそれは、想像してたよりもずっと香ばしい匂いがした。

「いただきます」

 口に運ぶと、まず最初に強めの塩気が舌に触れた。続いて、じわっと肉の旨味が広がる。香辛料は少し独特で、前世ではあまり嗅いだことのない香りだけど、嫌な感じはしない。むしろ、食欲を引き立てるような風味だった。

「……美味しい」

 思わず小さく呟く。気づけば、もう一口、もう一口と食べ進めていた。


 串から最後の一片を外して飲み込むと、ほんの少しだけ名残惜しさが残る。……もう一本くらい、食べてもいいよね。

 そう思ってまた串焼きを頼んでいた時、不意に周囲の会話が耳に入ってきた。


「おい、聞いたか?南の森の件」

「聞いた聞いた。蹂躙(スタンピード)が起きたんだろ?」

「そうだ、しかも数も多いらしい」

「そうか…まあ、今は確かギルマスがいるんだよな?だったら大丈夫だろ」

 もうその話が広まってるんだ。…でも、オーガの話は広まってないみたい。ひょっとして、情報統制をしてるのかな?

 というか、ギルマスってエルヴァンさんのことだよね?あの人ってやっぱり強そうだったし、有名なのかな?

 私はさりげなく屋台の脇に立ったまま、耳を澄ませる。人混みに紛れているし、今なら【隠密】も効いているはず。視線を向けられる気配はない。


「そんなことよりも、最近神殿にまた動きがあったみたいでな」

「そうなのか?それは初耳だ。何があったんだ?」

「なんでだか、聖女様が来たんだよ、ルーメルに」

 聖女!ここに来て、異世界の定番が出るとは…やっぱり聞いてみてよかった。

「こんなところまでか?なんでだ?」

「さあな、よく知らねえが…どうせまた、権力争いじゃないか?」

「ああ、王宮と神殿のか…なんであんな長いこと揉めてるんだか。うちの街みてえに、仲良くやっていけばいいのに」

「よく分かんねえけどよ、そうも行かないんじゃねえか?」

 なるほどね、今は王宮と神殿が権力争いをしてるってことか。言い方からして、恐らく今はその二強なのかな?


「そういや、お前はどうだった?見れたのか、聖女様は?」

「ああ、一瞬だけどな。遠目からだったけどよ」

「どうだった?」

「まだ幼い子供だったな。10歳くらいか?」

「本当か?可哀想に…魔法の才能があるってだけで、権力争いに巻き込まれちまうなんてよ」

 へえ、10歳ってことは、私より年下みたいだね。いつか会えるかな?


 話が終わるタイミングで、私もちょうど食べ終わった。…神殿か。きっと、奥のあの白い建物だよね。石造りの尖塔が空へと伸びていて、他の建物より頭一つ分高い。

「……ちょっと、見に行くだけならいいよね」

 誰に言うでもなく、そう呟いて。

 私は人の流れに紛れながら、その白い建物の方へと歩き出した。

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