↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/27

泥濘の風

「ちっ……!!」


 銃声。銃声。銃声。

 ここは皇国軍と連邦軍との最前線であり、絶え間無くEFWの銃声が鳴り響き続ける戦場だ。

 コックピットの中、皇国軍大尉である桐生英司は皇国軍製第4世代EFW《四式紫電(ヨンシキシデン)・改(カイ)》を操縦しながら舌打ちをする。

 四式紫電は皇国と連邦に分裂する前の旧日本国から存在していた、太平洋連合経済圏製第4世代EFW《VANGUARD》のライセンス生産品を皇国軍兵士の要望に合わせる形でフレームの一部と外装、内装や伝送系の変更・調整を行った中量型量産機であり、四式紫電・改はその隊長用として通信機能強化と出力向上を図った機体である。

 英司の乗り込む機体は右マニピュレーターで握る《九七式突撃銃》をバースト射撃しつつ、EFW用のシールドを突き立てて構築した防御陣地に身を隠しながら迫る連邦軍制第4世代EFW《崩山(ホウザン)》との撃ち合いをしていた。

 それだけではない。



──ヒュウゥゥゥン……



「……っ!! 来るぞ!! 各員衝撃に備えろ!!」



──ドカァァァン!!



 立て続けに爆発。

 連邦軍の榴弾砲による効力射が降り注ぐ。

 ユーラシア社会主義経済圏、とりわけ新ソ連による物資援助を受けている連邦軍はEFWによる有視界戦闘に加え、榴弾砲による砲撃により皇国軍へ消耗戦を強いているのだ。

 いくら堅牢なEFWと言えど榴弾砲の直撃を受ければひとたまりもない。砲弾の雨が降り注ぐ中防御陣地を飛び出していくのはまさに敵に撃って下さいと言わんばかりの愚行であり、連邦軍の思惑を理解しいるものの犠牲を抑える為に忌々しいながらもこうして遮蔽物を挟んで射撃戦を繰り広げていた。


「こちらは無駄に榴弾砲を使えないというのに……!!」


 贅沢な使い方だ、と吐き捨てながら効力射の止んだ間隙を狙い、油断してその身を晒した崩山の胸部装甲から上を背部左側に搭載したビームキャノン《三式荷電粒子砲》で以て消し飛ばす。素早く機体を隠し、報復として襲い来る銃弾をやり過ごしつつ、ビームキャノンの冷却を済ませておく。

 撃ち切った九七式突撃銃の弾倉を外し、フロントスカートにマウントしていた弾倉を掴み、装填する。ガチン、とマニピュレーターが弾倉底部を叩いてしっかりと奥まで差し込むと、自動で薬室(チェンバー)内部へと初弾が叩き込まれる。


「くっそぉぉぉぉぉ!!」


「くたばれ連邦のくそったれぇぇぇ!!」


「売国奴がぁぁぁぁ!!」


 威勢が良いことは結構だ、と英司は内心でそう呟くも、こうでもしなければ士気を保てない現状にやはり支援軍の遅さを改めて痛感し、今日何度目かも知れない舌打ちをこぼす。

 ダダン、ダダン、とバースト射撃の銃声を響かせながら遮蔽物越しに敵機が射撃時に露出する箇所を狙いつつ、隙を伺う。


 すると。


『……ガガッ……お前ら……待たせたな!!……ピーッ……榴弾砲、撃てぇぇぇぇ!!!!』


 砲兵隊長の通信だ。皇国軍第3前線基地を統括する少佐からの許可が下りたのだ。

 戦場故に通信が乱れているのかノイズこそ入っているものの、現場の皇国軍兵士にとっては朗報である。程無くして、榴弾砲の轟音が通信機越しに響き渡り、風切り音と共に放たれた榴弾が上空を飛翔。そして……



──ドカァァァン!!



 爆音。そしてまた、爆音。

 遮蔽物越しに着弾した榴弾が破裂し、連邦軍の崩山を吹き飛ばし、機体を引きちぎっていく。

 次々と襲い来る榴弾が、遮蔽物を根元から吹き飛ばし活路を作っていく。



──バァァンッ!!



「狙撃部隊か……!!」


 遮蔽が吹き飛び、射線が開けたことにより後方で控えていた狙撃部隊が先程まで連邦軍の防御陣地だった場所に配置されていた崩山のコックピットを正確に撃ち抜いていく。

 英司はようやく突撃の好機が訪れたことに無意識に、されど凄絶な笑みを浮かべながら自身が率いる中隊へ向けこう叫ぶ。


「突撃だぁぁぁ!!」


 うおおおおおお、という雄叫びと共に、満を持して僚機の紫電と共に防御陣地から飛び出しスラスターを全開で吹かしながら戦場を突っ切っていく。

 砲撃など知ったことか。

 もう既に、狙いを付けた場所にはいないのだから。

 その手に持つ突撃銃を斉射し、ある者はバズーカを撃ち放ち、残敵掃討を遂行していく。


「砲兵部隊だ!! 砲兵部隊を探せ!!」


 砲兵部隊を仕留めることが出来れば、更に前線を押し上げることが出来る。場合によっては物資や弾薬を接収し、補給の足しにすることすらも可能なのだ。

 英司は紫電・改のセンサーでスキャンを続けながら、敵防御陣地の破壊やまだ抵抗する機体の破壊、脱出され放棄された機体の鹵獲を進め、部下にもそうするよう指示を飛ばす。


「発見!! 敵砲兵部隊発見!!」


 武藤中尉の通信だった。

 よくやった、でかした、中尉ならばやれると信じていた、と叫びながら砲兵の掃討を命じる英司。


「ひ、ひぃあああああ!?」


「た、たすけ……!!」


 武藤中尉の紫電がもつ短機関銃が火を噴き、歩兵たちをまるで虫けらのように蹴散らしていく。


「榴弾砲の確保は完了……砲弾も沢山だ……」


 英司は撃たれず放置された榴弾砲の砲弾をモニター越しに確認しながら口角を上げ、少佐へと報告を終える。


『ご苦労だった、諸君。物資の確保後、速やかに帰投するしたまえ。……本当に、よくやった』


 この1か月で最大の戦果だ。その手に持つ火器を掲げ、紫電の群れは勝鬨を上げる。

 仮初の勝利だとしても、今はただこの勝利に酔いしれるのだ。




キャラクター紹介

桐生英司

 階級は大尉。年齢は42歳で、身長は173cm。誕生日は11月30日。

 亜麻色の蓬髪に茶褐色の瞳の太平洋連合経済圏日本皇国軍の男性EFWパイロット。

 第一次機動大戦に旧日本国からの派兵で参加し、生還。無理解から来る不当な扱いに耐える中、皇国の発生に際し合流、以降は皇国軍兵士として日本統一の為に戦火に身を投じる。

 第3前線基地に存在するEFW大隊の内、一個中隊の隊長を任せられており冷静な判断と、思い切りの良さから部下には慕われている。

 好きなものは肉(代用食でも可、しかし良品に限る)、お茶漬け。

 嫌いなものは粗末な食事。

よろしければブックマーク登録の程よろしくお願いします。

応援の感想やレビューを頂ければ励みになります。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。