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日和見の対価

──コモンウェルス経済圏フィンランド


「なんだこりゃ……」


 こんばんは世界。本日はお日柄も良く、スクランブル出撃も無い平和な日々を送っていた、そんな夜。

 そろそろ退勤しようと思っていた矢先の突然の命令書が《独立EFW大隊ダインスレイヴ》基地へと届き、同部隊の隊長たるフィンランド軍少佐、アリア・オルセンはその内容に盛大に顔を顰めていた。

 曰く、この度コモンウェルス経済圏は日本皇国へ支援軍を派兵する。

 曰く、フィンランド軍もその流れに同調しダインスレイヴ隊を派兵することを決定した。

 曰く、これは司令部からの命令であるが故に拒否権は無い。


「……確か極東の内戦はかれこれ2年以上続いていたはずだ。このタイミングで支援軍?」


 いくらなんでもやる気がなさ過ぎる……皇国軍に尋ねれば全く以てその通りだと抗議されても不思議では無い行動である。アリアは盛大に頭を抱える。



──どうしてこうなった。



 国際世論もあるのだろうが、もっと早くに支援軍を派兵していれば早期に内戦終結をさせられただろうに、と。

 物資の支援程度では旧日本国から離反した日本連邦、ひいてはそのパトロンを務める新ソ連相手に勝てるわけがないのだ。そもそも兵員も、物資も、兵站も、何もかもが足りていない状況なのはわかりきっていることだろうに。

 皇国も皇国だ。

 意固地になって支援要請が遅れている時点で皇国にも非がある。


「フランスにイタリア、ドイツも動くというのか……これを機に新ソ連の弱体化を目論む連中も……っとそれはフィンランドも同じだったな」


 正義感から支援軍に参加する国家もあれば、新ソ連の影響力を削ぐ為に参加する国家、皇国への影響力を強める為に参加する国家もある。

 それに派兵をするとなれば、それこそ新ソ連と隣接する国家は前線部隊の再配置をしなければならない。どうしても空きが出る以上、間隙を突かれるわけにはいかないのだ。

 その為の、1ヶ月。

 EFWとそのパイロットだけでなく、整備兵や物資の輸送ルートの確保も必要だ。


「……皇国からの報告書もどこまで正しいのか……」


 全て報告書通りとは限らない。想定よりも悪化していることも鑑みて作戦を組む必要がある。

 司令部め、退勤間際になんてものを、と忌々しげに呟きながら痛む頭を抱え荷物をアリアは纏めるのであった。






──太平洋連合経済圏アメリカ


「……なるほど」


 アラスカに程近い前線基地にて、《第7機動戦闘大隊アルテミス》の隊長のアメリカ軍中佐、ヘリオス・ウィンチェスターは司令部からの通達に目を通していた。

 かねてよりの友好国として、同盟国として皇国へと物資の支援をしていたが、これまでのアメリカのやり方はやはりやる気のないものだった。


「……こうなる前に支援軍を送るべきだ、と再三提言書は出していたんだけど……今更か」


 ヘリオスは頭を抱える。

 全ての対応が後手に回っている感覚が否めない。後手に回り続けたが故のツケが回っており、物量による圧殺を許している状況に陥っているのだ。

 これでは支援軍を派兵したとしても、今度は支援軍によって物資を喰らい潰しかねないだろう。


「……どうしたものか。ア(・)レ(・)の調整は最終段階に入ってはいるが……」


 彼女はと(・)あ(・)る(・)兵(・)装(・)を思い浮かべながらそう呟く。


「……敵の威勢を削ぐ為にも……ここは出すべきかな」


 であれば、最終調整のスケジュールを急がせなければならない。

 戦(・)場(・)を(・)一(・)変(・)さ(・)せ(・)ら(・)れ(・)る(・)兵(・)装(・)を他陣営に先駆け投入し戦力を誇示する為にもだ。


「……隊長、こちら報告書です」


 こんこん、というノックに対して入室を促すと、ドアの隙間から顔を覗かせる女性兵士が。

 かつては特攻部隊に所属していた中尉、エレーナ・コマロフであった。模擬戦の報告書を纏めて提出しに来たのである。


「ありがとう。ここに置いててもらえるかな」


「はい……それでは」


 書類を渡すとそそくさと帰ろうとするエレーナ。しかし、ふとヘリオスの手元にある書類に目が止まる。


「……支援軍……?」


「……丁度いい。説明しておこうかな」


 エレーナは件の支援軍の説明をヘリオスから聞かされる。

 ふむ、と呟くエレーナは口を開く。


「……私は、外国のことはよくわかりません。……ですが、1つだけ言えることが」


「……それは?」


「……アメリカは失敗した」


 確かに、とヘリオスは頷いた。言い得て妙である。

 ここまでの外交政策や戦争遂行の失敗がこのような事態を招いたとも言えるであろう。全く、要職に就いているのに自軍の恥を見ているようで嫌になる。


「……ままならないね」


 眉間を揉みながらヘリオスはウンザリしたようにそう呟いた。




◾︎EFW DATA

機体名:四式紫電/四式紫電・改

型式番号:MAU-PUE-JF4/MAU-PUE-JF4S

所属:太平洋連合経済圏

世代:第4世代

全高:18.1m

機体重量:63t

重量帯:中量機

動力源:バッテリー

最大速度:マッハ2.2/マッハ2.6

瞬間速度:マッハ1.1/マッハ1.3


◾︎地形適正

[地上]〇

[空中]△

[水中]△

[森林]〇

[砂漠]〇

[寒冷]〇


◾︎兵装

●主兵装

・九七式突撃銃

日本皇国軍において運用されている105mm口径のアサルトライフル。威力と貫通性、連射性能を両立したスタンダードなモデルであり、銃身下部にはフェイルセーフ用としてビームバヨネット(銃剣)を出力出来るように作られている。

物資不足にも関わらず生産が強行された為に工兵の反発を招いてしまった上に、性能そのものは1つ前のモデルとほぼ変わらないという始末である。

装弾数60発。フロントスカート左右にそれぞれ2基ずつ予備弾倉をマウント可能。


・九五式対EFW狙撃銃

前述の九七式突撃銃との選択兵装。

対EFW用ということもあり200mmと大口径の狙撃銃である。威力と貫通力に優れ、重量機であっても装甲を貫徹することが可能。しかし、その分大型化・高重量化している為に取り回しは悪い。

装弾数6発。ボルトアクション式を採用。


・九四式300mm無反動砲

前述の九七式突撃銃との選択兵装。

300mmのバズーカ砲であり、高性能炸薬によって機体に大きなダメージを与えることを主目的とする。

装弾数5発。


・三式荷電粒子砲

背部左側、もしくは右側に搭載されるビームキャノン。バッテリーから直接供給を受けることで安定した火力を誇る。冷却性能に重きを置かれ、短時間の冷却で連射が可能。


・七式高周波軍刀

高周波振動により切断性能を引き上げ、対象の分子結合を破壊する対装甲戦闘において有効となる兵装。開発には日本人技術者が積極的に関与しており、刀身は日本刀のような緩やかな反りの入った形状を採用している。その特性上、斬撃効率に優れる他、度重なる改良が続いた本兵装は第7次改修型であり片手でも取り回しが出来る程の軽量化に成功している。

HF-SABER Type-7の和名である。


・STORMHAIL ML2-8

背面左右に分散配置した2連8連装式の小型ミサイルランチャー。近〜中距離での飽和攻撃を主目的としており、対装甲用弾頭を用いていることから重量機にも一矢報いることが可能。

同時発射最大数16。装弾数32。


●副兵装

・三式物理防楯

中型物理シールド。複合装甲を採用しており、衝撃を吸収することで高い防御性能を獲得している。また、末端部が杭状になっており、地面へと突き立てることで即席防御陣地として機能し、戦闘時の機体保護やシールドを手に持つ必要性が存在しないことからより安定した射撃姿勢を取ることを可能にする。


・12.7mm CIWS

側頭部両側に搭載された近接防御火器。口径は12.7mmであり、高レートでの連射が可能。牽制やミサイルの迎撃において用いられる。


・多目的短刀

両腰に装備された近接戦闘において補助兵装として配備されている高耐久コンバットナイフ。関節部やセンサー部といった比較的脆弱な箇所への攻撃に適する。他兵装使用不能時の最後の手段としての意味合いが強い。


・HG40A2

補助兵装として配備されている40mm口径のハンドガン。第2次改修型として射撃反動低減による射撃精度の向上がなされている。火力面においては控えめな為、関節部やセンサー部といった比較的脆弱な箇所への攻撃に適する。

装弾数10。


●内装関連

・熱管理・冷却システム

両肩部に搭載された電磁加速兵装や高周波兵装の発熱を効率的に処理する冷却機構。一定以上の発熱を検知した際に冷媒を噴射することで兵装の性能低下を抑え、稼働時間を延長する。


・トリモチランチャー

小型の高粘着性樹脂弾を射出する非致死性拘束用兵装。マニピュレーター基部に搭載されている。関節部やセンサー部へ付着させることで敵機の運動性を低下させる他、破損した構造物の落下を防ぐ応急処置に用いられることもある。


◾︎機体概要

日本皇国軍で製造・運用されている第4世代EFW。

一般機の《四式紫電》と隊長機の《四式紫電・改》が存在しており、四式紫電・改は通信機能の強化や出力の上昇といった改良がなされている。

基本構造は太平洋連合経済圏の主力EFW《VANGUARD》を流用しているが皇国軍のEFWパイロットの要望に合わせてフレームの一部と外装、内装や伝送系の変更・調整を行っている。外見は全く異なる機体であり、より無骨な印象を受ける角張った外装を取り付けられているが、機体後方は運動性の底上げの為に敢えて一部のフレームを剥き出しにするという思い切った構造になっている。また、VANGUARDよりも若干の軽量化や速度上昇に成功している。

国産兵装の他、VANGUARD用の兵装を流用(一部は和名変更されている)出来る為に拡張性の高さも担保されており、無改造で長距離狙撃にも対応可能。選択兵装は上記だけでなく、現場で急遽製造されたものも確認されている。

現状物資不足に悩まされている為か、損傷機をパーツ取りに用いる共食い整備が常態化しており、一部の兵装、特にミサイルに関してはそもそも搭載せずに出撃することが増えている。


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