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9-2

 四方八方から羽の生えた獣たちが襲いかかってくる。フーゴは自身の構える大振りの剣を一閃する。体の周囲を薙ぎ払うようにぐるっと回転させれば、何体かの獣が悲鳴を上げながら吹っ飛ぶ。

 だが、それに怯むでもなく獣たちは次から次へと殺到する。両手で剣を持つフーゴはそれを振るしかできない。なにかアイテムを出して攻撃の助けにする余裕はない。


 フーゴは素早く動く。まずは自分の前にいた獣二体を大雑把に斬る。羽を斬れば飛べなくなるとか、足を斬れば動けなくなるなど、一応考えてはいるが、いざ動くとそんな細かい攻撃はできない。

 剣が大きいのもあるし、獣が近すぎる位置にいるのもある。それ以上に、そんな細部を狙っている時間的余裕がない。

 とりあえず、獣たちの体がちぎれて動けなくなったので、それで良しとする。


 左横から大型の猫の姿の獣が、その鋭い牙をフーゴの体に食らいつく。振り払いたいが、右横の獣をまず処理する。真上から剣を下ろせば、体はきれいに斬れたが頭はつぶれた。ついでにその背後にいた獣の頭も斬れた。

 首筋に痛みを感じる。背後からも食いつかれている。身をよじりながら、剣を振る。


「ん?」

 背後と左から食いつかれている獣たちを一挙に排除しようと剣を振ったが、倒せたのは左にいた猫型の獣だけだった。

「お前、蛇か」

 フーゴに背後から食いついているのは、蛇型の獣だった。その柔らかく動く体を生かして蛇はフーゴの攻撃を交わしていた。

 フーゴは一旦剣を片手で持ち、開いた片手でむんずと蛇の体をつかむ。その間、敵が迫ってくるので、足は動かして集中されるのを避ける。


 ぎゅう、と手で締め上げれば蛇は苦悶の声を上げる。蛇に羽が生えてようがそれが攻撃に活かせてはいないな、とフーゴは思う。

 向かってきた敵に、締め上げた蛇を投げつけ、まとめて切り伏せる。


 周囲の敵が少なくなったところで、試してみるかと手に入れたコインを投げる。

 一つ目はまばゆい閃光を放つものだった。自分の体の近くには投げないようにしよう、とフーゴは学ぶ。

 さらにもう一つのコインを投げる。こちらは効果がよくわからなかったが、倒したはずの敵が、そのコインの近くで息を吹き返した。

「おお。回復系か」

 フーゴはなるほど、と改めてその敵を切り伏せるとその場所はもらった、と切った魔物を蹴り飛ばしてそこに仁王立ちした。その位置で敵を迎え撃つ。


「こりゃ、いいや。傷受けても、軽傷なら回復が追い付く」

 フーゴは笑いながら向かってくる獣たちを処理していく。とはいえ、ずっとこの場所に留まり続けるわけにもいかない。

 初めに身じろいだあの石像がじわじわと体勢を変えている。そろそろ、あいつが攻めてくる。

 フーゴが考えていると、扉が開いた。


「あっ!」

 扉を開けた人物がフーゴと目が合って、声を上げた。

「よう。お先!」

 フーゴは敵を切り伏せつつ、彼に気さくに声をかける。


「くそ……まあ、そうだよな。お前が先に行ったんだから」

「まあ、ゆっくりしていってよ」

「ほざけ!」

 フーゴの軽口にカシアは言い返す。フーゴだけに戦果はとらせない、とカシアも剣をとる。

 戦う人間が二人になったことで、獣たちの数は格段に減っていく。


 ズズズ……と重たいものがじわじわと動くような地響きが聞こえてきた。フーゴは来たか、と石像に目をやる。

「石じゃない!」

 フーゴは動き出した石像の姿が石から変化していたことに歓喜した。これならば、剣で対応できると喜んだのだ。


「あっ、お前!」

 カシアの声を背で聞きつつ、フーゴは前へと突っ込んでいく。


 猫頭が両手に持つ杖を振り下ろす。避けようか受けようか迷った。迷った分、判断が遅れた。結果、受けるしかなくなる。


 ずっしりと重い衝撃が剣を伝って両腕に伝わる。さて、これをどう跳ね返そう。フーゴはまだ不敵に笑いつつ、そんなことを考えている。


 これが、ユリシーズ達といる場面ならば彼らから援護が来る。今は、どうか。



 フーゴは確信していた。だから、笑う余裕があった。背後から走る足音が聞こえる。

「おらあ!」

 カシアが跳躍し、猫頭の首に剣を横一閃薙ぎ払う。


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