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愛犬たちと異世界辺境スローライフ~王家から逃げたアラサー女子、スマホ通販で快適生活~  作者: 紅しょうが


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第66話 ギルド長の調査

王都冒険者ギルド。


セブライトは執務室で、一枚の書類を眺めていた。


そこに記されているのは、以前このギルドで冒険者登録をした女性の名前。


一ノ瀬玲。


Fランク。


依頼を受けた記録も、ほとんどなかった。


冒険者として見れば、特別目立つ存在ではなかった。


だが――。


今、その名前は別のところで耳にする。


レイ・ヴァレンシュタイン。


辺境騎士団長レオンハルト・ヴァレンシュタインの妻。


セブライトは椅子に背を預けた。


「……一体、何があったんだ?」


もちろん、結婚そのものを調べたいわけではない。


気になっているのは、別のことだった。


――パール化粧品。


王都で人気が広がっている化粧品ブランド。


最初は一部の女性たちが使っている程度だった。


それが今では、令嬢たちの間で評判になっている。


品質も高い。


しかも、これまで王都では見たことのないような商品が次々と出てくる。


「どこで作られている?」


セブライトは資料をめくった。


販売元。


流通経路。


取り扱っている商人。


一つずつ確認していく。


だが、肝心の製造者については、はっきりした情報が少ない。


「……妙だな」


セブライトは眉を寄せる。


そこでふと、以前耳にした話を思い出した。


パール化粧品が広まる前。


辺境から王都へ入ってきた、とある商品。


それが――。


石鹸。


セブライトは記録を探した。


「パール化粧品の前身が石鹸……か」


ならば、そこから辿ればいい。


誰がその石鹸を作ったのか。


誰が使っていたのか。


誰がその存在を広めたのか。


セブライトは商業ギルドや商人たちから集めた情報を並べていく。


すると、一人の女性の名前が何度も出てきた。


「……グレイス」


辺境騎士団副団長グレン・ハルトマンの妻。


辺境で、その石鹸を早くから使っていた人物らしい。


「副団長の奥さんか」


セブライトは椅子に座り直した。


さらに記録を追う。


グレイスが、その石鹸を知った経緯。


そして、その石鹸を作っていた人物は――。


「……レイ・ヴァレンシュタイン」


セブライトの手が止まった。


しばらく資料を見つめる。


「……そういうことか?」


まだ確証はない。


だが、一つの線が見え始めた。


Fランク冒険者だった一ノ瀬玲。


辺境で石鹸作りを始めた女性。


そして、現在のパール化粧品。


「もし全部同じ人物なら……」


セブライトは小さく呟いた。


「一ノ瀬玲は、辺境へ行ってから何をしていたんだ?」


冒険者としてではない。


別の何かを始めた。


その何かが、今のパール化粧品へ繋がっている。


セブライトは資料をまとめた。


「もう少し調べる必要があるな」


まだ誰にも報告するつもりはない。


王家から何か言われたわけでもない。


ただ――。


ギルド長として、一つの疑問を放っておけないだけだ。


セブライトは次の資料を手に取った。


そこには、辺境で玲が石鹸作りを始めた頃の記録が残されていた。


一つの小さな石鹸から始まったものが、どこまで繋がっているのか。


セブライトの調査は、まだ始まったばかりだった。

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