↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
愛犬たちと異世界辺境スローライフ~王家から逃げたアラサー女子、スマホ通販で快適生活~  作者: 紅しょうが


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

63/89

第56話 パール化粧品、新店舗完成

翌日。


 昨日、みんなで見に行った店舗候補の建物を、玲はもう一度眺めていた。


 大きすぎず、小さすぎない。


 街の人が歩いている通りからも見えやすく、女性一人でも入りやすそうな場所だ。


「……やっぱり、ここがいいです」


 玲が頷く。


「私も賛成よ」


 グレイスが微笑む。


「店内も明るいし、商品をゆっくり見られそう」


「警備もしやすい場所だ」


 グレンも周囲を確認している。


 セドリックは商業ギルドから渡された書類に目を通した。


「では、こちらの店舗で正式に契約を進めます」


「お願いします」


 玲は改めて建物を見上げた。


「ここが……パール化粧品のお店になるんですね」


「ああ」


 隣に立つレオンハルトが頷く。


「楽しみだな」


「はい!」


 玲の顔に自然と笑みが浮かんだ。


     ◇◇◇


 それから、忙しい日々が始まった。


「この棚は、こちらの壁にお願いします」


「分かりました」


 マリアが商品の並びを考える。


「石鹸は手に取りやすい高さにした方がいいですね」


「そうね」


 グレイスも商品を置く場所を確認していく。


「こちらには化粧水とクリームを」


「では、こちらは石鹸類にしましょう」


 セドリックは必要な物を書き出していく。


「棚、看板、包装材……他にも必要なものがありますね」


「結構ありますね」


 エミリアもメモを覗き込む。


「接客用の机も必要では?」


「そうですね」


 新しくパール化粧品の店員となるエミリアも、積極的に準備に加わっていた。


「エミリアさん、無理しなくて大丈夫ですよ」


「いえ! 私のお店でもありますから」


「……」


 玲はその言葉に、少し驚いた。


 そして――嬉しくなった。


「そうですね」


 玲は笑う。


「これから一緒に頑張りましょう」


「はい!」


     ◇◇◇


 そして玲も、シャンプーの開発を進めていた。


「うーん……」


 作業部屋に籠もり、試作品を並べていく。


「シャンプーの泡立ちは良くなったけど、もう少し髪がしっとりした方がいいかな」


 昨日までとは違う配合のものが、いくつも並んでいる。


『玲、いっぱいあるね』


「うん。全部ちょっとずつ違うんだよ」


『どれが一番いいの?』


「それを今、探してるの」


「ワン」


「雷電も分からないよね」


「ワン!」


『雷電は食べられるかどうかしか考えてないよ』


「アビー!」


 玲が笑う。


「でも、シャンプーが完成したら、今度は新しい石鹸も作りたいし……」


 玲は作業台を見渡した。


「せっかく新しいお店ができるんだから、商品も増やしたいよね」


 玲の目が輝く。


「よし。頑張ろう!」


     ◇◇◇


 数日。


 また数日。


 そして――


 少しずつ、店が形になっていった。


 壁が整えられ。


 棚が設置され。


 商品を並べる場所が決まり。


 店内には、パール化粧品の名前が入った看板が取り付けられた。


「……完成に近づいてきましたね」


 セドリックが店内を見渡す。


「商品も揃ってきました」


 マリアが在庫を確認する。


「石鹸、化粧水、クリーム……」


 そして玲が開発していた新商品も、少しずつ加わっていった。


「シャンプーも、ようやく納得できるものになりました!」


 玲が嬉しそうに言う。


「本当に?」


 グレイスが興味津々に覗き込む。


「はい。まだ大量生産の前に確認は必要ですけど、試作品としてはかなり良いと思います」


「楽しみね」


「それと、新しい石鹸も作りました」


「また増えたのか?」


 レオンハルトが苦笑する。


「だって、お店ができるんですよ?」


 玲が少し頬を膨らませる。


「商品が少ないより、いろいろ選べた方が楽しいでしょう?」


「確かに」


「でしょう?」


 玲が満足そうに笑った。


 その様子を見て、レオンハルトも笑う。


「玲が楽しそうなら、それでいい」


「……」


 玲の動きが止まる。


「え?」


「どうした?」


「い、いえ……何でもないです」


 玲は慌てて顔を逸らした。


『玲、また赤いよ』


「アビー!」


『だって本当だもん』


「もう……!」


「ワン……」


 雷電が呆れたように鳴いた。


     ◇◇◇


 そして――。


「玲様!」


 エミリアの声が店内に響いた。


「見てください!」


「え?」


 玲が振り返る。


 そこには、完成したばかりの店内があった。


 棚には、パール化粧品の商品が綺麗に並んでいる。


 石鹸。


 化粧水。


 クリーム。


 そして新しく加わった商品たち。


 どれも一つ一つ、玲が心を込めて作ったものだ。


「……」


 玲は言葉を失った。


「すごい……」


 まだ、誰もお客様がいない。


 けれど。


 ここには、これからたくさんの人が訪れる。


 商品を手に取り。


 香りを確かめ。


 気に入ったものを買って帰る。


 そして、その人たちの毎日の生活の中で使われていく。


「本当に……お店になったんですね」


「はい!」


 エミリアが嬉しそうに笑う。


「パール化粧品のお店です」


「……うん」


 玲はゆっくり頷いた。


     ◇◇◇


「玲、こっちへ来てくれ」


 店の外からレオンハルトの声がする。


「はい?」


 外へ出ると、そこにはみんなが集まっていた。


 レオンハルト。


 アルベルト。


 グレン。


 グレイス。


 セドリック。


 マリア。


 そしてエミリア。


 足元には雷電とアビー。


「どうしたんですか?」


「記念撮影をしよう」


「記念撮影?」


 玲が目を丸くする。


「せっかく店が完成したんだ」


 グレイスが笑う。


「みんなで記念に残しておきましょう」


「いいですね!」


 エミリアも嬉しそうだ。


「では、並びましょう」


 セドリックが声をかける。


「雷電とアビーは前でいいんじゃない?」


 グレイスがしゃがみ込む。


「ワン!」


『私、玲の隣がいい!』


「アビー、ちゃんと前に座って」


『えー』


「ほら」


 玲がアビーを抱き上げる。


「ワン!」


 雷電も玲の足元へ座る。


「よし」


 みんなが並ぶ。


 その後ろには――


 真新しい看板。


 そこには堂々と、


『パール化粧品』


と記されている。


「では、撮りますよ」


 声がかかる。


「はい!」


 玲が笑う。


 その瞬間。


 新しい店舗の前で、みんなの笑顔が一枚の写真に収まった。


 パール化粧品にとって――


 新たな一歩を踏み出した、大切な記念の日となった。



――第56話 終――

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。