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愛犬たちと異世界辺境スローライフ~王家から逃げたアラサー女子、スマホ通販で快適生活~  作者: 紅しょうが


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第39話 広がる評判

 数日後。


 グレイスは、いつものように貴族女性たちとのお茶会に参加していた。


「グレイスさん、最近なんだか肌が綺麗じゃない?」


 向かいに座っていた女性が、グレイスの顔をじっと見る。


「そう?」


「ええ。前より艶がある気がするわ」


「私も思っていたの」


 別の女性まで話に加わる。


 グレイスは、ふふっと笑った。


「実はね」


「何か使っているの?」


「ええ」


 グレイスは持ってきた小さな袋をテーブルの上に置いた。


「玲さんが作ったものなの」


「玲さん?」


「この間、話していた方?」


「そう。石鹸と化粧水を作っているの」


「化粧水?」


 女性たちが一斉に反応する。


「聞いたことがないわ」


「私もよ」


「どんなものなの?」


「洗顔した後に使うのよ」


 グレイスは説明しながら、化粧水のサンプルを取り出した。


「これを肌につけるの」


「それだけ?」


「ええ」


「本当にそれで肌が変わるの?」


「私が使ってみたら、肌の感じが違うの」


 グレイスは自分の頬に触れる。


「洗った後もつっぱらないし、肌がしっとりするのよ」


「へえ……」


「それに、この石鹸もいいの」


 今度は石鹸を取り出す。


「泡立ちもいいし、洗った後の感じが今までの石鹸と違うのよ」


「そんなに?」


「ええ」


 女性たちの視線が、石鹸と化粧水に集まる。


「ちょっと使ってみたいわ」


「私も」


「グレイスさん、これって買えるの?」


「もちろん」


 グレイスが笑う。


「もう販売が始まっているそうよ」


「どこで買えるの?」


 グレイスが販売場所を教えると、


「じゃあ、私も買ってみようかしら」


「私も欲しいわ」


「私も!」


 あっという間に話が広がっていく。


「グレイスさんが使っているなら、安心ね」


「そうよね」


「玲さんって、もともと化粧品の研究をしていたんでしょう?」


「ええ」


 グレイスは頷いた。


「だから、こういうものを作るのが得意なのかもしれないわね」


「なるほど」


 女性たちは納得したように頷く。


「それで、まだ他にも作るの?」


「ええ」


「他にも美容商品が?」


「そうらしいわ」


 グレイスは楽しそうに笑った。


「まだこれからみたいだけど」


「まあ!」


「次は何が出てくるのかしら」


「私、石鹸と化粧水を使ってみて、良かったら次の商品も絶対に試したいわ」


「ふふっ」


 グレイスも嬉しそうに笑う。


「私も楽しみなの」


 その日のお茶会で交わされた話は、そこで終わらなかった。


 帰宅した女性が家族に話し。


 侍女が別の侍女へ話し。


 知り合いから知り合いへ。


 石鹸と化粧水の話は、少しずつ広がっていった。


 そして――。


 * * *


「奥様」


「何かしら?」


 アルベルトの妻のもとへ、侍女がやって来る。


「先ほど、お茶会で少し気になる話を聞きまして」


「気になる話?」


「はい」


 侍女は少し嬉しそうに話し始めた。


「グレイス様が、とても肌が綺麗になったそうなんです」


「グレイスが?」


「はい。それで、玲様が作られた石鹸と化粧水を使っているそうで」


「……玲さんが?」


 奥様が顔を上げる。


「石鹸だけではなく、化粧水まで?」


「はい」


「そんなものがあるのね」


「しかも、それだけではないそうです」


「他にも?」


「はい」


 侍女が頷く。


「まだ他にも美容商品を作るらしい、と」


「まあ……」


 奥様の目が輝く。


「それは――」


 ふっと口元が緩む。


「楽しみね。ふふふ」


 * * *


 その頃。


 当の玲は、そんな噂が広がっていることなど知らずに作業スペースにいた。


「うーん……」


 玲は腕を組み、机の上に並べた材料を眺めている。


「次は何を作ろうかな」


『また始まった』


「だって、まだまだ作れるものがあるんだよ?」


『玲、楽しそう』


「うん!」


 玲は笑った。


 自分が作った石鹸と化粧水が、少しずつ人の手に渡っていることも。


 貴族女性たちの間で話題になっていることも。


 そして――。


 辺境伯夫人の耳にまで届いたことも。


 玲はまだ、何も知らなかった。


 ただ一つ。


 玲の頭の中には、もう次の商品が浮かんでいた。


「よし。ちょっと試してみよう」


『……玲、また研究始めるの?』


「もちろん!」


 今日も玲の研究は続いていく。


――第三十九話 終――

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