4.
「木の芽。おまえ、なんで部活でねえの?」
「…………」
今日も今日とて木の側に姿を現した先輩を、私はこれみよがしに睨みつけた。
先輩の交通事故以来、私は部活を休んでいた。学校には一応通っているが、授業の内容は頭に全く入っていない。ただ、惰性で席に座っているだけだ。
学生の本文である勉強ですらそうなのに、部活になんか行くわけがない。休み時間に様子を見に来てくれる部員たちも、私にはうっとおしいばかりだった。
「おまえ、まさか写真やめるつもりじゃねえだろうな?」
「……だったら、なんだって言うんです?」
私は心底面倒くさそうに、カメラを下ろしてうつむいた。
この話はしたくない。私が全身でそう訴えているのに、先輩は正面に回り込んでくる。
「なんでだよ! おまえ、写真撮るの好きだったじゃねえか!」
心底意外そうに尋ねる先輩に、私は怒鳴りそうになるのを必死で堪えた。
「……先輩には、関係ないです」
「はあ? 関係ないわけないだろ、俺はおまえの先輩だぞ!」
「もういなくなった先輩です。だから、関係ないです」
先輩の顔は見ない。声に感情がのらないよう、平坦な声音を心掛ける。
『写真を撮るのが好きだった』。
……確かに、入部したての頃は、そうだったかもしれない。
新しいおもちゃを与えられた子どものように、どこへ行くにもカメラを持って行った。構図も露出も考えず、手当たり次第にシャッターを切った。
けれど今は……、わからない。
きっと、先輩に言ってもわからない。
「いなくなったって、おまえ……」
わざとらしく胸を抑えてよろめいた先輩を無視し、私はカメラを鞄にしまって帰り支度を始めた。
「おおい! 待てよ、木の芽! まだ話の途中だろ!?」
「なんかここ、昔、墓場だったらしいです。幽霊出たら怖いんで、暗くならないうちに帰ります」
「ちょっ……! そんな話、初めて聞いたぞ!? う、嘘なんだろ? 墓場なんて嘘なんだろ!? ――ま、待てって! そんなところに俺を一人で置いていくな!」
先輩が血相を変えて縋りつこうとしてきたので、一歩下がってやりすごした。
自分こそが幽霊のくせに、何を怖がっているのだろう。数年後には、きっと先輩のことが怪談として語り継がれているに違いない。
「――ひえっ!?」
タイミングよく犬がうぉーんと遠吠えをし、先輩がびくっとしてきょろきょろ周囲を見回している隙に、私はそこを後にした。




