8 ドリア(2)
「「いただきます」」
うまうま。
「そういえば俺の服買った後何買いに行くんだ?」
「え〜。そのときの気分」
気分て
「化粧品とか?あとお母さんからパンと牛乳買ってこいって言われてるけど、これは帰るときでいいかな」
「俺は荷物持ちという認識でおけ?」
「おけおけ。たくさん買うから覚悟しといてよ?」
「はい。」
こう言いつつも持ちきれないほどは買わないという信頼が未来にはある。そんなに買わないよな……?
「ふう。」
ドリンク6杯目。そろそろお腹タプタプである。
「そろそろ時間だし出発しようか」
「おう。じゃあ俺が払うな」
2人で1,000円。北里柴三郎ではなく野口を出す。ほら、たまに新札対応してないことあるじゃん?財布の中はほぼ旧札である。新しいのは先日貰った10,000円くらいだ。
「はい500円」
「くっ、ありがとう」
スマートに奢ったのに払われてしまった。この程度ならお礼代わりに奢りたかった。
「かっこつけないで。ユウマのお財布に余裕ないよ?」
「奢るのはロマンなんだが。これでも結構あるぞ」
「この後数万は吹っ飛ぶかも」
「ひえっ」
父さんのボーナスから出たお年玉と今までのお小遣いのうち使わなかった分、そして今月限定のお小遣い増額分、合わせて30,000円ちょいが足りないことあるのだろうか。服ってそんなにお高いの??
「今日は上下2、3セットはこだわって買うから。足りなかったら貸してあげるから安心してね?」
幼馴染様に逆らえなくなった瞬間である。
服屋の方へ行こうとすると、
「待って。まずは美容院行くよ」
「ほわい」
「予約済みだから」
なぜ予約済みなのだろうか。そういえばさっき「そろそろ時間だし」と言っていた。つまりこうして俺が混乱するところまで想定内??
「こんにちはー」
「吉井さん、その人が?」
「そそ。じゃあやるよ」
どういうことなのだろうか。
「ここうちの高校と提携してるとこで自由が効くの。お得だよ」
服を買いにきただけなんですが
「服を買いにきただけなんですが」
「まずは髪整えよ?大丈夫かっこよくなる。私が保証するよ」
扱いとしては未来とご学友の実習とのこと。格好いい髪型にされてしまうらしい。
「そういえばカットで最優秀なんだっけ」
「そうそう。シャンプーとかはそいつの方が上手いけどね」
「川井です。よろしくお願いします、彼氏さん」
「彼氏じゃ――」
殺気!
これは未来からか?
「あはは、よろしくおねがいします」
「ユウマ、そんな硬くならなくていいよ」
「吉井さんの彼氏さんならもっと偉そうに踏ん反り返ってていいですよ。緊張しなくていいですからね」
硬いのは緊張ではなく未来さんからの殺気が原因です。なんの殺気だったのか。あれか、彼氏いないのに見栄でいるということにしてたのか。それだと新しく彼氏作るとき不利じゃね?
多分ここでカットや彼氏であることを拒否するとボコされる気がするのでおとなしくしておこう。
未来がカットしてる間、川井さんから学校での未来の話を聞く。
「あれは去年の5月のことです」
なんか始まった。ふむふむ。簡単に要約すると、川井さんは虐められており、学校辞めようか人間辞めようか悩んでいたところを助けてくれたのが未来、と。多分虐めは自殺考えるくらいだしキツかったのだろうが、それ以上に未来のよいしょが凄い。英雄とかリアルで言ってる人初めて見た。なんか宗教始められそうだな。入信希望したい
「お前そんなことやってたのか」
「言わないで…聞かないでぇ…」
鏡越しに見える未来の顔は真っ赤である。可愛い。これが俺の髪のカット中でなければもっと突っつきたいくらいだ。
「ふう、これで終わり。美緒、また後日、覚悟しといてね」
「?わかりました」
川井さん怒られたな。ただ本人的には英雄譚を語っただけなので、何が悪かったかわかってなさそうだ。
ということで川井さんのシャンプーで締めておしまいである。頭が軽くなったな。
「よし、だいぶ良くなったよ」
「そうか?自分のことだからよくわからん」
「吉井さんの彼氏なんですから自信持ってください。ちゃんと吉井さんに相応しいですから」
川井さんがそこまで言うなら意外といいんだろう。
「毎度ありがとうございました」
美容代にしては安かったな。高校生の実習だからか確かにお得だった。
「やっと服か」
「うん。そういえば予算いくら?」
「27,683円」
「具体的だね。お金貸すね?」
うそん。俺の全財産だぞ
「あっこれいい。これもいいな。いやでもこっちのが似合うかも」
買い物楽しそうだな〜可愛い人が楽しそうにしてるとこっちまで楽しくなっちゃうな〜
「このセット試してみて」
「は〜い」
俺着せ替え人形なう。心を無にして悟りを開けば着せ替え人形も楽しき哉。今なら俳句だって詠めそう。
「ん〜、でも下手に流行りに乗ってもすぐ置いてかれそうだし、もっと普遍的な感じで…」
普遍的らしい。すごいね。
どうせ服のことなんてわからないので別のことを考えよう。せや、素数数えたろ。2、3、
「顔がいいから全部似合うなぁ〜。よし、1セット目はこれで」
101、103、107、109、113、
「修学旅行って秋の最初だっけ?流石に秋服はまだ置いてないし、春服と、夏でも厚めのやつをいい感じにして〜」
383、389、391、あっ17で割り切れるな。397、
「ほら、ユウマ起きて」
「ハッおはよう。終わった?」
「うん。お会計行くよ」
服はよくわからないので確認すらしない。多分カッコいいはずだ。
42,000円
「なにこれ」
河井美緒: 元いじめられっ子。親は美容科にあまり理解がなく高校受験で無理を言ったため、親にいじめを相談することはできなかった。学校全体を動かし、いじめっ子を退学に追い込むことで救ってくれた吉井未来はキリストなどよりも尊い存在であり、神である(確信)。




