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そこへ一抱えほどある箱を手にして入ってきた女性がいた。年のころは四十代後半ってところか。前髪の方に少し白髪が見えたがそれを気にすることなく後ろで束ねている。はっきりとした顔の美人だった。
私の目がその人を追っていた。あまりカフェにそういった箱を持ち込む人って少ないからだ。
彼女はそのままレジカウンターへ行った。箱をドンとおいて奥を覗き込んだ。レジの女の子が戸惑いながら対応する。
「いらっしゃいませ」
「あ、あの人いるかしら」
「あの人と申しますと・・・・」
すると奥からマスターが出てきた。
「やっぱり。声でわかった」
些か迷惑そうな態度だった。それでわかる。この女性はマスターの親しい人だと。マスターも店の方へ出てきた。箱を受け取って中を開く。
「たくさん、届けてもらってご苦労さん。今日はゆっくりしていけるんだろ」
「まあね、そのつもりで出てきた。いい肉が食べたい。おごって」
元気な人だ。マスターが私の視線に気づいたらしい。目が合う。その女性もこっちを見た。
頭を下げた。
「あ、こちらお得意さん。特に石鹸のね」
そんな紹介をしてくれた。石鹸を買う時はいつもマスターが出てくるからだ。
「あら、ありがとうございます。それで最近売れ行きがいいのね。しっかり売ってくれてんのか心配だったんです。ちゃんと買ってくれている人がいるってわかって安心しました」
丁寧にお辞儀をしてくるから私も立ち上がって再び頭を下げた。
「ラベンダーのサボン、大好きなんです。こちらこそありがとうございます」
そんなことを言っていた。その人はマスターの奥さんだった。元気な女性。この夫婦、奥さんの方がかなり年上だとわかる。そんなことも親近感を覚えた。




