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彼女に言わせるとこういう話だ。
マスターと結婚してしばらくは甲斐甲斐しい奥さんをやっていた。流産してショックで仕事を休んでいた。でもその頃のマスターは建設会社に勤めていて夜も遅い。家にいてもすれ違いの生活だった。
ある日突然、なんで自分はこの人に合わせて生活をしなければならないのかと疑問を持ったらしい。それで旅にでた。
関西方面をうろうろしていると自然な製法で作る石鹸の工房と巡り合った。即移住を決意したそうだ。弟子入りをし、別居することを伝えた。
マスターは戸惑ったが、それからしばらくして自分の働き方を見直して仕事を辞めた。そして友人のカフェを引きつぐことになった。それがここ。
ラベンダーのサボンという名前にしたのは、奥さんが初めて作った石鹸がそうだったからだと言う。
「私が作ったサボンを売って欲しいって言ったの。最初、この人ったら渋ったのよ。じゃあ、ラベンダーのサボンだけってことでなんとか手を打ったんだけど」
「じゃあ、今でもずっと離ればなれの生活をしているんですか」と私は問う。
それは別居とは言わない気がして。
「そうそう。でもいいんです。それまでの結婚生活だってずっと顔を見ないことが多かったから。今の方が毎日電話して話をしているし、スカイプもあるしで交流しています」
笑いながら見覚えのあるラベンダーのサボンを商品棚に並べていた。
「今度、そちらの工房を見せていただいてもいいですか」と竹中が会話に入ってきた。
私の方が「えっ」とその顔を見る。好奇心溢れる顔をしている。
「いいですよ。お得意さんですから。いつでもどうぞ」
と破顔し、名刺をくれた。
「夏休みを一緒にとりましょう。そして工房を見たり、気の向くままにとあちこちを散策するのもいいですよね」
その竹中の提案、気に入った。うん、行きたいと即答していた。
「じゃあ、その旅行、誕生日のプレゼントにします」
もう私は逆らわない。その案にうなづいた。その素直さを褒められる。愛情があれば年上なんて関係ないことがよくわかった。私はやっとその肩に寄り添えて甘えられる相手を見つけた。
そう確信できたのは、この場所。
ラベンダーのサボンで。
ちょっと不器用だけど、いい女には年下の男が似合う。そんなイメージで書いてみました。
最後までお読みいただきましてどうもありがとうございます。友人からきれいな「ラベンダーのサボン」をいただきました。それを眺めていて、サボンを巡っての話を書きたいと思いました。




