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私達は落ち着いて話をするために、川沿いのベンチに座った。抱き締められたままだと相手の心がすぐ目の前にあるようで落ち着かなかった。
一言一言が相手の息を止め、乱していく。それが手に取るようにわかる距離だった。
「私ね、この十日ほどずっと好きだった人と暮らしてたの」
そう切り出した。
わずかに竹中の膝の上にのせられた握りこぶしに力が入ったようだ。
「家に帰るのがうれしくて楽しくてたまらない毎日だった。あの人と一緒にいられることが夢のようで幸せだったの」
今までの私はそんなことを口に出せなかった。それを言えば今の自分がますます不幸になる気がして。けど、こうすることで美佐穂との生活は過去のこととして自分の胸にストンと収まる不思議な気分になった。
人にこうして語れるってことは、自分なりに終止符を打つということだとわかった。
「はあ・・・・」と竹中が呻るような押し殺した不気味な声を発した。
「あの人の笑顔を守るためだったらどんなことでもできるって考えてた。そんな気にさせてくれた人、初めてだった。でももうおしまい。まるで殺風景だった私のところに命短い桜の花がパーッと咲いて散ってしまったようなそんな感じ」
「桜ですか」
竹中が見上げる。頭上には葉桜が生い茂っている。
「なんかそれってわかる気がします。その存在がうれしいってことあります」
「私の心はどんどんその人に傾いていった。私はこの人をずっと愛するんだって」
それは本当だ。竹中が大きなため息をついた。




