竹中圭馬
竹中はいつも私にまとわりついてきた。ただのじゃれ合いが、それ以上の存在になってきていた。私の心の中にぐいぐいと入りこんでいた。
残業の仕事が終わり、会社を出た。私のすぐ後を竹中がついてきた。話があると言われたが、私には何も話すことはない。
だから、無視して帰ろうとしていた。
人ごみをどんどん歩いていた。
「待ってくださいよ。途中まで一緒に帰りましょう」
「ほっといてったらっ」
しつこい犬を追いやるように、しっしっと手を振る。
「私にどうしてつきまとうのっ」
「鹿島さんが放っておけない。かわいいからです」
そんなセリフを人目も気にしないで言ってくる。すれ違う人がじろじろと見ていく。恥ずかしかった。
しかたなく駅へ向かう道から橋を渡り、川沿いへ行くことにした。この辺りは散歩やジョギングをする人くらいしか来ない。
私は頑固で、人から褒められても素直に受け入れられない性格たちだった。私なんかにつきまとって、竹中にどんな利益があるんだろう。
美佐穂との幸せだった生活が終わり、再び私の心はすさんでいた。幸せに思う生活なんて味合わなければよかったんだ。
それにはこの竹中にも私という人間を良く知ってもらわなければならない。
「私なんていつもブスっとしているし、人の話にも参加しない。愛嬌もない。気の利いた話題も提供できないし、女としての魅力ゼロなんだから」
もうつきまとってもらいたくなかった。私に期待をさせないでって叫びたい思い。
竹中が真顔になった。いつもヘラヘラしている彼も怒ったのかもしれない。




