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修学旅行の時、土産屋にたむろしていた同級生たち。それぞれが帰りを待つ家族のために、土産品を物色していた。
私は家に形ばかりのお菓子をもう買っていたから、時間つぶしに隣の店に入った。自然食品の小さな店だった。その一角に添加物なしの石鹸が並べられていた。
バラ、バニラ、レモンバームといろいろな種類の石鹸がある。そして私の目が止った。ラベンダーだ。
表示を読むとラベンダー・サボンと書いてあった。フランス語で石鹸のことをサボンという。私達が歌などでなじんでいるシャボンはポルトガル語、スペイン語からきていた。
ラベンダーのサボンは一つしかなかった。
それを手にしようとしたとき、私の側に誰かが息をのんだことに気づいた。美佐穂だった。
美佐穂もそのラベンダーのサボンを見ていたらしい。美佐穂がサボンを手に取って私に渡してくれた。
「はい、これ、買うんでしょ」
「うん、そうだけど・・・・」
美佐穂も買おうとしていたことがわかる。
「在庫があるかどうか店員さんにきいてみるから」
美佐穂はレジのところに立っている人に訊ねていた。しかし、店員は首を振っている。私は美佐穂に譲るつもりだった。別にここで買わなくてもいいって思ったから。
「生田さん、どうぞ」
「いいよ。鹿島さんこそ、どうぞ。宝物を見つけたような良い表情をしてたよ」
私達はいつまでも譲り合っていた。そろそろ集合時間になる。美佐穂は決心してじゃあとそれを買い求めた。
「半分こ、しよう」と。
それを半分に切り、私と美佐穂はお互い気に入ったラベンダーのサボンを手に入れた。同じ物を美佐穂が持っていることがうれしかった。しかもそれは私達だけの秘密。
修学旅行のあとは私の机の上に飾られていた。それを見るたびに美佐穂とシェアしたことを思いだした。それを使ってなくなることを恐れた。
その夜、私は半分にした石鹸を使った。よく泡立てて顔を洗う。ラベンダーのいい香りに包まれて、美佐穂を感じていた。
私は男の人でも女の人でも誰かの一番大切な人にはなれないのか。美佐穂のことを自分なりに大切にし、愛していると思った。愛おしい、かわいいって。
再びの失恋は心にぽっかりと穴があいたようだ。ラベンダーのサボンを両手で包み込んでいた。こんな状態でも私は泣くことができなかった。




