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顔が歪んでいたのかもしれない。無理して笑ってみた。心は泣いていたのに強がって、美佐穂のように人を笑顔にするように頑張って笑ってみた。
美佐穂は立ち上がり、座って笑顔を作っている私を抱きしめた。美佐穂の大きなお腹が私の顔に触れる。ちょうどポンと顔のところで蹴られた。
赤ちゃんにも応援されたようで私が吹き出すと美佐穂も笑った。お腹が揺れていた。淋しいけどどこかで私の心が軽くなった。
私には結婚してくれなんて言えない。そんな勇気がなかった。二人を養っていく未来を考えることは楽しかったけど、現実にはそう簡単じゃないってことわかってた。
そして一番突き刺さるのは世間の目だ。そのうちに私達が普通の関係じゃないってわかってくるだろう。そして子供もいじめられるかもしれない。
幸せを獲得する代償としてそんな後ろ指さされるような生活を強いられることになるかもしれない。臆病な私はそんな人生を選ぶこともできなかった。
結局、美佐穂は夕食後に男に連絡し、すぐに迎えが来た。荷物はない。何も持たずにここへ来ていたから。
「あ、待って。ねえ、サボン」
買ってきたまま玄関に置き忘れていた。紙袋を差し出した。
「それ、郁ちゃんのだよ」
「いいよ、美佐穂が持っていって。私はまた買ってくる」
ああ、私達はまたこんなことをしている。美佐穂もそれに気づいたらしい。
「じゃあ、こうしよう」
美佐穂がサボンを手にして台所へ立つ。ナイフで半分に切った。そうだった。この手があった。
「はい、半分こ。仲良く使おうね」
「うん」
あの時と一緒だった。




