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「この妊娠、私が企んだこと。子供ができちゃえば結婚してくれるなんて考えたから。だけど今あの人、仕事のことでごちゃごちゃしていてそれどころじゃないって怒鳴って。それからずっと毎日喧嘩ばかりしていた。仕事が忙しいのに結婚とか出産とか冗談じゃないって怒鳴られた」


「喜んでくれなかったんだ」


 そんな男、美佐穂を苦しませる男なんて最低だ。


「うん、ずっとピルを飲んでいたからそんなことになるなんて考えもしなかったんだと思う。あの日もそう。そのことで口論になって・・・・出てきちゃった。あの人、私より仕事を選んだんだってわかったの。毎日喧嘩してたら胎教にも影響するだろうし。お金の続く限りビジネスホテル巡りになる覚悟してた。あのカフェでそんなことを考えていた時、郁ちゃんと会った」


 それから美佐穂はうちで暮らすようになったってわけだ。


「あいつから連絡がきても取り合わなかったの。でも、先日二人でラベンダーのサボンへ行ったでしょ。ずっとあいつ、あのカフェを見張ってたんだって、笑えるでしょ」


 ふふっと笑う美佐穂だが、私には笑えない。もし私がその男の立場なら、同じことをしていただろう。突然出て行った美佐穂、帰ってこないし、電話にも出ない。身重だからその心配は限りないものだろう。


 どこかでお腹が痛くなったらどうしようとか、ちゃんとご飯を食べているのかとか。もう喧嘩の原因なんてどうでもいいから戻ってきてほしいと考えたんだろう。


 唯一の手掛かりとして好んでいたカフェには姿を見せるかもしれないってことで見張っていたと想像できる。



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