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いけない。あんな男に気を取られて美佐穂との大事な時間を疎かにしていた。
「おいしいよ。すっごくおいしい」
魚料理がそれほど得意ではなかった私。けど美佐穂の作ったカレイの煮つけはやわらかく味も染みていてぱさぱさ感もなく、ご飯がいくらでも食べられる。ご飯のお代わりをした。
美佐穂が私の茶碗にご飯を盛る。
「半分くらいかな」とちょっと加減をしてくれた。
差し出される茶わんを受け取り、思い切って訊ねてみた。
「あの人が・・・・彼氏?」
私がそんなことを言うとは思ってもみなかったらしく、美佐穂の表情が凍り付く。けどすぐにほころぶ。
「うん、お腹の子のお父さん」
私はそれだけ確かめたかったから口をつぐむ。美佐穂が目を伏せながら話し始めた。
「私って男運がないの。っていうか、見る目がないのね。口のうまいへらへらした人ばかりに惹かれていつも失敗してたの」
「口のうまい人?」
「そう。黙っている男の人が苦手なの。ほら、叔父たちの生活してた時のことを思い出しちゃうのかもね。口だけでもいいから私を安心させてくれる人に頼っちゃうみたいな。でもつきあうと向こうから私のこと、何考えてるのかわかんないってポイっと捨てられちゃう。そんなことの繰り返し。あの人は違ったの。私が笑っていてもそうしたければそれでいいって言ってくれた初めての人」
そんな美佐穂の言葉に嫉妬の炎が燃える。
「けど、私がいけないの。いけないことをしちゃったから大喧嘩になった。もう帰れないって思った」
ドキッとした。




