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 私は係長の何を見ていたのか。何を知っていたんだろう。一緒に働いていて顔を見ているからっていい気になっていた。


 あの晩、ちょっと優しくしてくれて、家庭の事情を話してくれただけなのに、係長の恋人気取りだったのだ。

 やっと一般の病室に移るというときに皆でお見舞いに行った。そこにいた係長は憔悴した奥さんを庇いつつ、私達を笑顔で迎え、息子さんの様子を話していた。


 他の研究員たちは久しぶりにあう係長と話が弾んでいたが、私は始終黙っていた。係長は別人のようだった。いや、これが本当の係長の姿だったのかもしれない。


「しばらくは車いすの生活になるだろうって、すぐに自宅を改装しようって話しているんだ」


 突然起こった悲劇だった。


 でも大きなトラブルに奥さんと一致団結して立ち向かおうとしている。ここにいる係長は会社にいる時よりもシャキッとしているように思えた。家族や夫婦仲には、特別大きな問題がないのにギクシャクするときがある。出会ったときは好きだったところが、妙に鼻につく、イライラするということはあるだろう。


 心が離れてしまっても家族間に何かトラブルが起こると家族が協力し、一つになる。今ここにいる係長は奥さんに優しく声をかけ、そして側にいる奥さんも係長を頼りにしているのがわかった。とても離婚調停中の夫婦には見えない。いや、もうそんなことはどうでもよくなったのではないか。


 この二人には守っていかなくてはならない怪我を負った子供がいる。この二人には歴史があるのだ。それが元の鞘に戻るだけのこと。


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