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「酔っ払いさんの足元が気になって」
先程の雨で足元がかなり濡れている。滑りやすいのだ。ハイヒールなんて危なっかしい物は履いていないが、さっきからパンプスのかかとが危なっかしい。つま先だちで歩いていたのだ。
それに気づいていたらしい。人を気遣ってくれた優しい手なのだ。それは受け入れていいと認識する。
それでもわずかな勇気が必要だった。息を止めてその手に触れた。大きくごつごつした乾いた手。向こうからギュッと手を握ってくる。私もその手に体重をかけて足元に気をつけながら階段を下りた。もう少しで階段が終わる頃、係長が言った。
「今、うちは離婚調停中なんだ」
ドキッとした。どうして今、そんなことを言うんだろう。
いや、ただの話として言ったのかもしれない。
「随分前から妻が子供を連れて出て行って、そのままになっていたんだけど、最近そんな話になったんだ」
そうだったんだ。別居中だったということ。もう何年もそうならすぐにでも別れられるんじゃないかなんて思ったりもする。
向こうから出て行ったのなら子供の養育費などの問題で争っているんだろう。婚姻破綻した後なら他の人と交際しても問題にならないということを何かで読んだことがある。もしかして、このことは告白の前触れなのかと勝手に考え、心が震えた。
手をつないだ私達は無事に地上へ降り立った。手を放すかどうか決めかねていたが、係長が放すまでそのままで歩いた。
「離婚調停中ってことは他の人には内緒にしてほしい」
「はい」




