3
「ああ、そういうことっすか。なんだ。お昼を全部取り上げられるのかと思っちゃったんで。それっていい考えですね。お弁当交換っておもしろい」
あなたのは買ってきたお弁当でしょと言いたかったが、そんなことしか竹中にしてやれない。仕事が終わってから二人でどこかへ行くことがあり得ないからだ。
「じゃあ、そのお気持ち、めっちゃうれしいんで遠慮なくいただきます」
私の箸を持ち、両手を合わせると元気よくエビフライから食べ始めた。
「うまい、これ、鹿島さんが作ったんですか。それともメイドさんがいるとか? お母さんか誰かが来てくれているとか?」
普通ならそう考えるだろう。もし私が男性だったら絶対に彼女の手作りだと疑われる物。
「奥さん的な存在が作ってくれた」
「なんすか、それ。意味わかんないっす。あはは」と笑われた。
でもそれが一番美佐穂との関係に近いと思った。
「じゃあ、最近すごく笑顔を見せてくれるのもその人のおかげですか」
そうよと言うと竹中が真剣な顔をした。
「えっ、もしかして彼氏がすごい家庭的な人ですか。それかどっかの有名シェフで家でもいろいろ作ってくれちゃうとか」
竹中が勝手に想像してくれている。だから敢えて何も言わず、そんなとこ、とだけ言った。
「去年の誕生日に一緒に過ごした人と同じ人ですか」
急にそんな質問をされ、じっと考える。
その意味は今年の誕生日を一緒に過ごす人とずっとつきあっているのかという問いと気づいた。
「違いますから。っていうか、もうこれ以上私の前で誕生日のことは話題にしないでね」と窘める。
「ああ、三十路だからっすね。すいませ~ん」と高らかに笑う。
こいつめって思う。




