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 私はそっと寝室の襖を開けた。闇の中、手さぐりで自分の布団へ入る。美佐穂を起さないようにできるだけ静かに行動した。でも寝ころんだとたん、「郁ちゃん」と声をかけられた。


 美佐穂は寝ていなかったらしい。その声は落ち着いたものだ。


「ん? 起こしちゃったかな」というと「ううん、起きてた。さっきはごめん」と美佐穂らしい返事。


「あのね、実は……」


 暗闇の中、美佐穂は語り始めた。彼女の幼少期の話を。



「私ね、小さい時に伯父の家に預けられていたの。すぐ下の妹が病気でずっと入院しなくちゃいけなくて母が朝から晩までずっと付き沿ってた。父も仕事で帰りが遅かったし。初めは叔父たちもすごくよくしてくれてた。年上の従兄のお兄ちゃんたちもいて私を歓迎してくれた。でもまだ私は一年生だったから、慣れない環境、母恋しさに泣いていた。心配してくれる母から毎日電話があった。私はいつも帰りたいって泣いていた。もし私が泣いて駄々をこねていたら母はすぐに迎えにきてくれるかもしれないってそんな期待をしていたんでしょうね。それが伯父さんたちには負担になっていたみたい」


 私は何となくドキドキしていた。こんなに明るい美佐穂。たとえ子供の頃でもきっとかわいくてみんなに好かれていたに違いないって思っていたから。


 次は何を言うのか、恐れに近いものがあった。


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