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「ううん、違うの。ごめんね、泣いたりして」と美佐穂は顔を上げた。
もうその表情は晴れやかだった。
「もし、郁ちゃんが男の人だったら、絶対に郁ちゃんに恋してたと思う」
ドキッとするようなことを言われた。
その頃、美佐穂に対する私の意識は、高校時代の友人との同居というよりも好きだった人とのときめきの再会、そしてむりやり同棲のような気分だったからだ。そしてこの幸せがいつまでも続けばいいと願った。
美佐穂はもうそれ以上言わず、大きなお腹をかばいながら立ちあがる。私は皿を手にして台所へ持って行った。
「私が洗うから残り物をお願い」
「はいはい」
美佐穂が食器を洗いはじめる。私は言われた通り残り物をタッパーに詰め込み、冷蔵庫へ入れ、食卓の上を拭いた。
それから美佐穂が先にお風呂に入り、その後私が入った。その間、ずっと無言でいる彼女。
まだ若干気まずい雰囲気が漂っている。何がいけなかったんだろう。どうして美佐穂は急に泣きそうになったんだろう。そんなことを思いながらラベンダーのサボンを泡立てて顔を洗った。
風呂から出ると美佐穂は賑やかなテレビ番組を見て笑っていた。その笑顔のままで私の方をみた。肩から力がぬけた。
よかった。元の美佐穂に戻ってくれたみたいだ。
私達は、体を張っただけのドタバタしたお笑い番組を見て笑った。どこか無理していてもそうすることで美佐穂の涙の原因に触れないように努めていた。




