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ずっと知らずにいた幸せな空間だった。私の顔がほころぶ。それを目ざとく美佐穂が見ていて問う。
「なによ、一人でニヤニヤして気持ち悪いわよ。なんなの?」
それは美佐穂と一緒にいるから。そう即答しようとした。でも少し間をおく。そして言葉を変えた。
「なんかね、自分が新婚の夫になったような気分なの。今まで一人暮らししていてそこへ奥さんがやってくる。男の人ってこういうことが幸せ感じて仕事を頑張ろうって思うのかなって思ったの」
「え? 郁ちゃんは男じゃないよ」
きょとんとする美佐穂。そんなちょっと天然っぽいところも好き。
「そんな気持ちにさせてくれるってことだよ」
美佐穂は、ああ、そういうこと、とつぶやきながら空いた皿を重ねながら私の言葉に耳を傾けている。
「男の人に限らなくても子供が学校から帰ってお母さん、ただいまっていうでしょ。すると家の中から笑顔が向けられてお帰りって言ってくれる。遊びに行くときもお母さん、今夜のご飯は何って聞いて、それが自分の好きな物だったらすごくうれしい気分で家を飛び出すんだと思う。今更だけどそんな体験をさせてもらってる。ありがとう」
美佐穂のおかげで幸せな家庭のやり直しをさせてもらっているのだ。そう、実感できた。
そして美佐穂もまるで恋の告白でもされたかのように驚きの表情からその言葉の意味を噛みしめ、うれしさを味わっているような表情を見せた。
そして美佐穂の目に涙がウルウルしていた。何かいけないことを言ったのか。
「ごめん、なんか気にさわること言った?」
デートで彼女が急に泣き出した男の人のようにオロオロしていた私。女なのに女性の気持ちがわからないなんてサイアクだ。




