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 この駅から途中乗り換えて帰るより車の方が近いことがわかった。タクシーにお金を払い、降りる。我がボロアパートの前に立った。


 美佐穂の目は輝いていた。まるでシンデレラ城を見上げるようなそんな期待の目。


「ホントにいいの?」


「うん、散らかってるけどどうぞ」と言ったが、うちには散らかるほどの余計な物がなかった。


 アパートの二階、202号室。鍵を取り出してドアを開けた。暗い部屋に明かりをつける。まさかこの部屋に誰かを連れてくるなんて思いもしなかった。


 入ってすぐ台所のシンクに朝コーヒーを飲んだマグが置きっぱなしになっている。さらに奥の部屋のベッドが見えた。朝起きたままの状態で毛布がまくれあがっていた。パジャマも掛布団の上に投げ出されていた。


 普通の人は突然誰かがきても恥ずかしくないようにきちんとしてから外出するのだろう。私にとって、この部屋に誰かを連れてくるなんて想定外もいいところだった。しかも美佐穂を連れてくるなんて。

 そんなものぐさな生活をさらけ出し、奥へ招き入れた。慌ててベッドの毛布を直す。

 しかし、美佐穂の目にはそんなものは見えていないらしい。壁一面に貼り付けてある私が撮った写真の一枚一枚を見ていた。


「知らなかった。鹿島さんって写真が趣味なんだ」


「ん、趣味っていうか二、三年前から興味がわいた」


 最近は全然なんだけどと言い訳のように言い足した。それは係長の影響。彼に誘われるままに出掛けることが多くなり、記念にと撮りだしたのが始まりだった。



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