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 座ろうとしないで壁いっぱいに貼られた写真を見ているから、照れを隠すためその背中に「お茶でも飲む?」と聞いていた。写真には人物は写っていない。しかし、その傍らに係長の存在があるのを私はいつも眺めていた。それが美佐穂に気づかれるかもしれないと思い、気恥ずかしかったのだ。


 湯を沸かしながらまだ夕飯を食べていなかったことに気づいた。いつもならあのカフェを出て隣の弁当屋でおかずを買ったりするが、今日は美佐穂と出会ったこともあって真っ直ぐ帰っていた。


 冷蔵庫には何もない。美佐穂もお腹は空いているのかもしれない。


 そのことを問う前に、写真を見終わった美佐穂がやっとパソコンデスクの椅子に腰を下ろした。

 にっこり笑いながら「私、妊娠してるの。今もう六か月」と台所に立つ私に言ってきた。

 お腹がダボっとしているドレスを見ればわかる。それが決してファッションとかじゃなく、本物のお腹がせり出しているのもわかっていた。


「おめでとう。楽しみだね」


 美佐穂の状況がどんななのか分からない私は世間一般の人が言うようなことを口にした。美佐穂の子供なら絶対にかわいいに違いない。それは喜ばしいことだ。でも一人では妊娠できない。相手の男性の存在は無視できないだろう。


 そのことをどう訊ねたらいいのかわからない。そこへずかずかと踏み込んでいいのかもわからなかった。それなら訊かない方がいいのだ。

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