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美佐穂は男子だけの憧れではない。女子たちも注目するほどの存在だった。三年生になり、私達は別のクラスになっても学校で時折見かける美佐穂はいつも笑顔だった。確か女子大へ進学したという記憶がある。
通り過ぎる人たちがじろじろ見ていた。男女のもつれ話なら見て見ぬふりをしてくれたかもしれないが、女同士、片方が妊婦で泣き顔を見せている。
私の心配事は美佐穂の体のことだ。どこかリラックスできて座れるところを考えた。
「ねえ、じゃ今からうちへ来る?」と口に出していた。
一度止まった涙がまた再発するかもしれない。電車に揺られている時も油断がならない。それならちょっと奮発してタクシーに乗ろうと思った。二人ならそのくらいの価値はある。
駅前だからタクシーを拾うことは難しくはない。今からビジネスホテルへ泊まるなら、うちの方がいいに決まってると勝手に解釈した。
私は美佐穂のきちんとした了解をとらずに、タクシーの後部座席に乗り込んでいた。美佐穂はわずかに躊躇していたが、私が奥へ座りこむと美佐穂も乗り込んだ。行く先を運転手に告げ、車が走り出すと車内はシーンとしたままだった。
「驚かないでね。小さなアパートだから」
その静けさを破るためにそう言った。いつもなら他人にそんな気遣いはしない。けど、私にとって美佐穂は特別だ。守ってやりたいと思った。




