6
秋の修学旅行の時だった。五泊する九州旅行。
そういう時、私はいつももう一人必要という部屋に割り当てられる。案の定、三人グループの一人が近寄ってきた。
「ねえ、鹿島さん、一緒の部屋になってくれないかな」
その時声をかけてくれたのが美佐穂だった。美佐穂ほどの人気があれば、私じゃなくてもいいと思った。でもせっかくだから首を縦にふった。
その五泊、ずっと美佐穂と同じ部屋になった。そして自由行動も一緒にまわろうと誘ってくれた。美佐穂と一緒にいると皆の視線を感じた。特に男の子たち。
いつも彼女を探している。そんな時私の姿を見つけることがコツだと言いふらしていた。
他の女子たちより私は背が高かった。女の子の中で一人だけ頭が出ている私を見つければ、その近くに美佐穂がいるということらしい。目印ってわけ。
*****
「鹿島さん、バリバリのキャリアウーマンって感じ」
そう目の前の美佐穂が褒めてくれた。
「まっさか。全然そんなんじゃない。相変わらず淡々と与えられた仕事をこなす平社員です」
本当にそんな情熱があったら今の私は変わっていたかもしれない。そんな人生もあるんだということ、気づかなかった。
「生田さんは?」
いろいろ具体的に訊きたかったが、話したいことを勝手にしゃべってくれるだろうとそんな聞き方をしていた。
ん、ぼちぼちねとだけ言った。
私はその時まで、こんなに華やかでみんなに慕われている美女には明るい未来しかないと決めつけていた。
それから美佐穂は口を閉ざした。私達は沈黙したまま駅に着いた。
美佐穂はどうするんだろう。このまま帰るのか。名残惜しかった。連絡先を教えてもらって、またあのカフェで会いたいと思った。
けど、さっきの状況を思い出していた。
あのカフェで、曇りガラスの陰で泣いていたのはこの美佐穂だったんだと今更ながら気づいたのだ。
この明るい美佐穂が泣く。想像できない。美佐穂を泣かせるようなことが起こること自体があり得ない。




