第5話 ローゼンハイム家へ
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拙い部分もあるかと思いますが、楽しんでいただけたら幸いです。
ここから第三者視点に切り替わります。
夜会が終わり2日ほどたったころ、レオンハルトは執務室で政務をこなしていた。そこにドアのノック音が聞こえる。
「入れ」
「失礼いたします」
アルヴァインが入ってきた。彼の手には様々な資料がある。
「この前の件の調査が完了しましたので報告いたします」
「さすがに早すぎるだろ……」
「この程度は問題ありません」
「そうか……」
レオンハルトは資料を手に取り読み始める。すると彼の表情がみるみる険しくなる。
「やはりアネッサは家族から虐待を受けていたか……」
「……はい、表向きは生まれつき体が弱く、療養中との理由で社交には参加していないようですが、実際は彼女に属性が宿っていないことを理由に彼女を虐げているようです」
「愚かな……そして光の方は?」
「それについてはこちらの資料を……」
レオンハルトはアルヴァインが指す資料を読み始める。
「そうか……これもやはり……」
「はい、おそらく彼女は伝説の光の属性の持ち主であると推測します」
アルヴァインがさらに続ける。
「王宮の古い文献の中に『黒の魔女と光の王』という記録がありました。こちらに書かれている内容と、殿下からお聞きした状況があまりにも酷似しております」
アルヴァインは文献の内容をかいつまんで説明した。
『はるか昔、ヴァルトハイツ王国のとある山奥に黒の魔女がおりました。黒の魔女は人々の心を蝕み、恐れた民から命を狙われるようになりました。彼女は遠くの山奥に逃げ、誰にも会わずひっそりと暮らすことにしました。
それから時が過ぎたある雨の降る日、黒の魔女は家の近くで倒れている人を見つけます。駆けつけると身なりの良い青年が血を流しています。彼女は迷いましたが、その人を助けることにしました。青年に近づき抱えようと触れた瞬間、彼の体から溢れ出た光が彼女の闇の暴走を鎮め、2人は運命に導かれて結ばれた……と記載されています』
「後にこの青年は『光の王』と呼ばれています。これは、この青年に光の属性が宿っていたと考えられます。また、黒の魔女の『黒い力』は、殿下も宿しておられる闇の属性だと思われます。そして、この文献の光の表現は、まさに殿下がおっしゃった内容と同じです」
「なるほどな」
「それで、いかがなされますか?」
「当然、アネッサを今の境遇から救い出す」
「どのように?」
「アネッサに婚約を申し込む」
「それは急ですね。よろしいのですか?」
「ああ、気づいた以上放ってはおけん。婚約打診の後、アネッサを王宮に匿う形にしたい」
「そこはお任せください。適当な理由をつけてアネッサ様をこちら側に迎え入れます」
「わかった、任せよう」
「しかし、殿下も大胆ですね。いきなり結婚をせまるとは」
「なっ!? 俺はただ彼女を一日でも早く救い出したいだけだ!」
「救うだけなら、他に方法はあったでしょうに……まあ、そうゆうことにしておきましょう」
「……いいから準備を進めろ」
「はっ」
アルヴァインは顔をニコニコさせながら部屋を出ていった。
数日後、準備を完了させたレオンハルトとアルヴァインは、ローゼンハイム家へ向かう馬車の中にいた。
「事前にローゼンハイム卿には打診をしており、訪問の許可をいただいております」
「わかった」
短い返事をしたレオンハルトは馬車の外の景色を見ている。その表情は明らかに険しかった。
「殿下、お気持ちはわかりますが、アネッサ様を匿うまでは穏便に事を進めるのが得策です。ご辛抱ください」
「ああ、わかっている」
(出会ったあの日以降、闇の力は驚くほど安定している。アネッサ……君は俺を救ってくれた……今度は俺がお前を守ってやる……)
そして、馬車がローゼンハイム家に到着した。
「ようこそいらっしゃいました。レオンハルト殿下、アルヴァイン殿」
「夜会以来だな、ローゼンハイム卿」
「して、本日はどのようなご用件で?」
「実は貴殿の長女であるアネッサ嬢にも同席願いたい」
「……え?……ア……アネッサでございますか?」
「ああ」
「も……申し訳ありませんが、アネッサは生まれながら体が弱く、このような場に慣れておりませんので、殿下にご無礼をはたらく恐れもございますが……」
「かまわん、呼んできてくれるか」
「は……はい、少々お待ちください……」
ローゼンハイム卿はアネッサを呼びに部屋を後にした。
一方アネッサは、父から今日は部屋でおとなしくしているように言われたので、自分の部屋の中にいた。今日は王子殿下が来るので、下手なところを見せるわけにはいかないとの父グラッドの配慮だった。
アネッサの部屋は当初に比べると、古さはあるが清潔感のある部屋になっていた。アネッサは椅子に座り、この前のレオンハルトのことを思い返していた。
(レオンハルト殿下……冷酷な方だという噂だったけど、お礼を言っていた時のあの目……あんなにお優しい目をする方がなぜ……?)
その時、ドアが激しくたたかれる音がした。
「おい、アネッサいるか?」
父の声を聴き、アネッサはびくっと体を震わせた。
「は……はい、おります……」
(なぜお父様がこんなところに……)
父グラッドはアネッサをこの小屋に連れてきて以来、一度もここへ来たことがない。アネッサに恐怖と戸惑いの感情が沸き起こった。
「第一王子のレオンハルト殿下がお前に会いたいそうだ。まず着替えをさせてやるからついて来い」
(レオンハルト殿下が?)
「しょ……承知しました」
アネッサは恐る恐る戸をあける。すると、グラッドの怒鳴り声が響き渡る。
「さっさと開けないか!! このグズが!」
「も……申し訳ありません……!」
「……とにかくついて来い。こっちだ」
「は……はい……」
アネッサはグラッドに連れていかれ、ある部屋に入れられた。そこで髪を整えてもらい、豪華なドレスを着せられる。そして、準備ができたアネッサを見て、
「まあいいだろう。これからレオンハルト殿下とお会いする。いいか、くれぐれも余計なことは口にするな」
「は……はい……」
グラッドと共にアネッサはレオンハルトが待つ部屋へと向かった。
「お待たせいたしました。娘のアネッサでございます」
「ア……アネッサ・ローゼンハイムです……」
レオンハルトはきれいに着飾った彼女を見つめる。きれいな青のドレスに見事な装飾品を身につけている。レオンハルトはその美しい姿に見とれるも、ドレスから見える細い腕を見て怒りがこみ上げてくる。しかし、感情を押し殺して冷静に対応する。
「アネッサ嬢、ひさしぶりだな」
「え……? ……殿下は以前にお会いになられていたので?」
グラッドは何も聞いていないぞといった表情で一瞬彼女を睨みつける。
「ああ、この前の夜会でな。アネッサ嬢、あの時は本当にありがとう」
「い……いえ、とんでもございません」
「し……して、レオンハルト殿下、本日のご用件とは……?」
レオンハルトは姿勢を正し、二人に向かってこう告げる。
「今日はアネッサ嬢との婚約をお願いしに参った」
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