第4話 夜会【レオンハルト視点】
続きを見ていただきありがとうございます。
拙い部分もあるかと思いますが、楽しんでいただけたら幸いです。
今回はレオンハルト視点での『夜会』になります。
また、この回から毎日19時に1話ずつ更新していきます。
[レオンハルト視点]
俺はレオンハルト。ヴァルトハイツ王国の第一王子で闇の属性を宿している。伝説の属性ということで周りからはかなり期待されていた。
俺も周囲の期待に応えようと、勉学、剣術、政治学など、あらゆることをひたすら励んだ。この頃は誰もが俺を次期王太子として疑わなかった。
しかし、年を重ねるごとに闇の制御ができず、暴走をくり返すようになった。魔力が強い者ならそこまでの影響が出ないが、魔力が弱い者は俺の闇の魔力に耐えきれず、最悪精神が崩壊してしまう者も出てきてしまった。
それから俺は人を避けるようになった。近くには魔力が高く、かつ信頼できる者しか置かなかった。周囲は、
「レオンハルト殿下はもうだめだ」
「最近は人を遠ざけ、めったに人前にお姿を現さないとか」
「最近はますます冷酷非道になったとのうわさも……」
など、今では誰も俺を次期王太子と言うものはいない。そこまで王位にこだわっているわけではないが、今までの努力を民たちのために使いたいという思いもある。しかし、闇の制御がうまくできない以上、人前に気安く出られない。
「……」
「どうしたのですか? そのような仏頂面をして」
「うるさいぞアル、考え事だ」
アルヴァインは俺が幼い頃からの付き合いで、俺の補佐をしてくれている。ベルンハルト子爵家の令息で、非常に頭が切れ、冷静な判断ができる所を気に入り俺の下に置いた。
「闇の制御のことですか? 最近はけっこう長く抑えこめていると思いますが」
「それは闇の力の増大が落ち着いてきているだけだ。これではまだ十分とは言えない」
そう。最近は成長するにしたがって増大していた闇の力が収まってきたのだ。力の絶対量が変わらなければ制御はしやすくなる。しかし、まだ長い期間は制御できていない。
「それでも数日抑えこめるようになったのは、大きな進歩だと思いますよ」
「そうだな」
「そろそろ表に出てみてはいかがですか?」
「いや、いつまた暴走するかわからない以上、気安く外には出られんよ」
この辺で話を切り上げて、俺は政務をこなすこととした。
そんなある日、アルヴァインから報告を受けた。弟のジュリアスが婚約を決めたらしい。相手はローゼンハイム家のミリア嬢とのことだった。
「3ヶ月後にローゼンハイム家で夜会を開催し、そこで正式に婚約を発表するとのことです」
「そうなのか、こちらでは執り行わないのか?」
「それが、ローゼンハイム卿たっての希望とのことで、ジュリアス殿下も了承されました」
「そうか」
「殿下、せっかくの弟君の晴の舞台です。参加されてみては?」
「……そうだな、少し不安はあるが、弟の晴れ姿は見たいしな」
「いざとなれば私もいますのでご安心を」
「いつもすまないな」
「いえ、お気になさらず」
俺は久しぶりに外へ出ることを決めた。
そして3か月後、俺はアルヴァインを連れてローゼンハイム家へと向かう。途中の馬車の中でアルヴァインが俺の状態を尋ねてくる。
「本日の調子はいかがですか?」
「最近は暴走がほとんどなく落ち着いている。おそらく大丈夫だろう」
「そうですか、それなら弟君の晴れ姿をご覧になれそうですね」
「そうだな、楽しみだ」
そんな話をしていると馬車が止まった。ローゼンハイム家に到着したようだ。ジュリアスは一足早くローゼンハイム家に向かっている。家の前で合流する約束だ。馬車を降りるとジュリアスが駆け寄ってきた。
「兄上! お久しぶりでございます」
「ジュリアス、久しぶりだな」
闇の制御の影響で俺は離宮に隔離されていた。万が一があってはならぬという父上の判断だ。そのため、ジュリアスと会うのは本当に久しぶりである。ちなみに、今日のために事前に父上には許可を取ってある。
「ご壮健そうで安心いたしました」
「お前はずいぶん背が伸びたんだな」
ジュリアスと離れたのは俺が17歳の時だ。ジュリアスはその時14歳。俺は今21歳なので、ジュリアスとは4年ほど会っていないことになる。
「そうでしょう、僕も兄上と同じくらいになりましたよ!」
「そうだな、立派になった」
「ありがとうございます」
ジュリアスは満面の笑みを浮かべている。俺も久しぶりに心地よい気持ちになった。
「そろそろお時間ですので、お二人ともご入場をお願いいたします」
アルヴァインがうながす。
「それでは兄上、参りましょうか」
「ああ」
俺とジュリアスが会場の中に入る。すると、周りから歓声とざわめきが聞こえた。
「ジュリアス殿下だ!」
「なぜ……レオンハルト殿下が……?」
「今更……何を……」
ジュリアスを歓迎する声と、俺の姿を見て戸惑いの声を上げる者だ。最近では、王太子候補はジュリアスであるという声が圧倒的だ。俺が社交の場に出てくるようになると都合が悪いという貴族どもが大勢いるのだろう。
「……兄上……あまりお気になさらず……」
「ああ大丈夫だ、ジュリアス」
俺たちは会場を進む。そしてローゼンハイム卿が挨拶に来た。
「これはこれは、ジュリアス殿下にレオンハルト殿下。このような場に来ていただき、まことにありがとうございます」
この男がローゼンハイム家当主グラッド・ローゼンハイムか。侯爵家だけあって威厳のあるたたずまいだな……そして、その隣にはきれいな青色の髪の令嬢がいる。
「お初にお目にかかります。ミリア・ローゼンハイムと申します。ジュリアス殿下、レオンハルト殿下、本日はお会いできてうれしいですわ」
「ジュリアス・ヴァルトハイツです。ミリア嬢、お会いできて僕もうれしいよ」
ジュリアスがミリア嬢に挨拶をする。所作もずいぶん成長している。努力したんだな。
「レオンハルト・ヴァルトハイツだ……」
ミリア・ローゼンハイムか……きれいな所作に挨拶……さすが侯爵家令嬢というところだが、あの目……少し気になるな……
とりあえず、俺は今日の夜会のメインではないので、控えめな挨拶で済ませた。ミリア嬢が少し怪訝な表情を浮かべている。
その後は軽く会食を済ませた後に婚約の発表する流れのようだ。ジュリアスはミリア嬢と話をしている。俺は二人の邪魔にならないように距離をとった。
そしてしばらくした後、ローゼンハイム卿が皆の前に立ち意を決して声を出す。
「皆様、本日はお集まりいただき、ありがとうございます」
「本日は皆様にご報告があります。このたび、私の娘ミリアと第二王子殿下であらせられるジュリアス殿下が婚約することとなりました!」
歓声が沸き、皆が二人を祝福する。その姿を見て俺は心が暖かくなった。
しかし次の瞬間、急に闇の力が発動し、体の奥底から闇の力が沸き起こってきた。
(くそ……! なぜこのようなタイミングで……!)
このままでは、周りの人を巻き込んでしまう。アルヴァインは席を外している。俺は必死にその場から離れようと意識をなんとか保ちながら庭園と向かった。
やっとの思いで庭園につく。しかし闇の増大は止まらない。体から黒いオーラが立ちこめる。
(……まずいな……このままでは……!)
このままだと暴走してしまう! 俺はさらに周りから距離を取ろうとした。その時、
「あの……大丈夫ですか!?」
視界に銀色の髪に青い目のした女性が映った。くそ! この距離では彼女を巻き込んでしまう。
「俺に……近づくな……!!」
俺は精一杯の声で彼女を近づけまいと声を上げた。彼女は驚き歩みを止める。しかし次の瞬間、俺はバランスを崩してしまった。
「あぶない……!」
彼女は俺に駆け寄り、地面につく前に俺を支えた。すると、彼女からすさまじい光が立ち込めた。
(何だこの光は!?)
光は瞬く間に俺たち二人を包み込んだ。瞬く間に俺の体を覆っていたオーラが消えてゆき、闇の力が収まっていくのを感じる。さらに、今までに感じたことのない位に闇の力が落ち着いているのが分かる。
驚きつつも彼女を見ると、瞳の色が陽だまりのような美しい金色の瞳に変わっていた。
「お前……その目……? それにこの光は!?」
「そ……それが私にも何が何だかわからなくて……」
彼女も何が起きているのか理解できていないようだ。改めて彼女を見ると、貴族の令嬢とは思えぬほどドレスは質素で、装飾品も身につけていない。髪は痛み、体もとても華奢だった。だが、陽だまりのように輝く金色の瞳と、その凛とした素顔は今まで見たどの女性よりも美しかった。
「先ほどは青い目だったはずだ……色が金色に……」
「えっ……!?」
彼女は近くの噴水で自分の顔を確認する。そして、瞳の色が変わったことに驚いて何度も自分の顔を確認している。
「君は一体……? いや……とにかく助かったありがとう。俺はレオンハルトだ。君の名は?」
「私は……アネッサと申します」
アネッサか、いい名前だ。しかし、あの光のことが気になる。
「そうか、それでアネッサ嬢、先ほどの光だが……」
「殿下!!」
俺を呼ぶ声が聞こえる。その声の先を向くと見慣れた男だった。
「なんだ、アルか……」
「なんだじゃないでしょう!! まったく……とてつもない光が見えてそこに殿下がおられたので急いで駆けつけたというのに!」
こいつは優秀だが小言が多い。慣れてはいるが……
「いちいちうるさい奴だ……すまないなアネッサ嬢、こいつはアルヴァイン。俺の補佐をしている」
アネッサに彼を紹介する。するとアルヴァインはかしこまった姿勢になり、自己紹介を始めた。少し驚いたアネッサが慌てて返事をする。
「ア……アネッサ・ローゼンハイムと申します!」
(ローゼンハイム? ……ということは、あのローゼンハイム卿の娘か)
それだとますます腑に落ちない。この格好はおおよそ侯爵家の令嬢がするものではない。ましてや自分の家に大勢の貴族を招いた会だ。普通それ相応の格好をするはず。
「ローゼンハイム……では、こちらのローゼンハイム卿のご令嬢なのですね」
アルヴァインがアネッサに確認を取った。あいつも彼女を見て一目で違和感に気づいたのであろう。そして、彼女はその言葉に顔を青ざめる。
「……いえ……その……」
明らかに彼女は動揺している。その瞳には先ほどまでなかった激しい恐怖が見て取れた。俺はこの会話を終わらせるために彼女に声をかける。
「先ほどは助かった。体はもう何ともない。ありがとう」
「い……いえ、そんな……」
「いや、君が来てくれなかったら他の者にも影響が出たかもしれない。本当に感謝している」
「は……はい」
「また会おう、アネッサ嬢。……行くぞ、アル」
「はっ」
俺とアルヴァインは彼女の元から離れた。しばらく歩いたのち、
「珍しいですね、また会おうとは。そのようなこと一度も他の女性にはおっしゃったことがないのに」
「あの光で俺の中の闇が落ち着いた。詳しく知りたい」
「なるほど、そちらの方ですね」
「他に何がある?」
「いえ、何でもありません」
アルヴァインはなんだかうれしそうな顔をしている。こいつめ……
「アル」
「はっ」
「ローゼンハイム家について詳しく調べろ。それと、あの光のことも」
「2つ同時ですか?」
「お前ならたやすいだろう?」
「まあ、差し当たり問題ありません」
「わかり次第報告しろ」
「承知いたしました」
(ローゼンハイム家の令嬢とは思えない質素なドレス、装飾品。そしてあの華奢な体、ローゼンハイム家と知られたときのあの怯え……必ず何かある……それにあの光と瞳……)
俺はアネッサのあの怯えた顔と、すさまじい光のことを思い返しながら会場に戻っていった。
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