第3話 夜会
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拙い部分もあるかと思いますが、楽しんでいただけたら幸いです。
夜会当日、すでに多くの貴族達が来ており談笑を交わしている。ローゼンハイム家はヴァルトハイツ王国の中でも高い位のため、広大な屋敷には非常に大勢の貴族たちであふれかえっていた。
私は父からあてがわれた質素なドレスをまとい、あまり目立たぬよう庭が見渡せる窓の近くに立っていた。
「次の王はやはりジュリアス殿下だろうか」
「そうでしょうなあ。第一王子のレオンハルト殿下は、伝説の闇の属性を宿しておられるが、制御ができず暴走していると聞きますぞ」
「それに周りからは冷徹な男として恐れられているとか」
「それに比べて、ジュリアス殿下は聡明であらせられて、周りからの信頼も厚いと聞きます」
「となると……やはりジュリアス殿下が……」
そんな話を聞いていると、入り口付近が騒がしくなってきた。
「おお! ジュリアス殿下が来られたぞ!」
深みのある赤い髪に透き通った赤色の瞳をした美青年が、笑顔で周りに挨拶をしながら入場してくる。この方がジュリアス殿下かと私は遠くからその姿を見ていた。すると、ジュリアス殿下の後ろからもう一人の人物が入場してくる。
「お……おい、あの方は……」
「なぜこのような場に……? めったにお姿を見せないと言われているのに……」
「レオンハルト殿下だ……」
漆黒の髪に深みのある青い瞳。周囲を寄せ付けない冷徹な威厳を纏いながらも、どこか寂しげなその姿に私は見とれてしまった。
「これはこれは、ジュリアス殿下にレオンハルト殿下。このような場に来ていただき、まことにありがとうございます」
父がうやうやしく2人に挨拶をする。そしてミリアも、
「お初にお目にかかります。ミリア・ローゼンハイムと申します。ジュリアス殿下、レオンハルト殿下、本日はお会いできてうれしいですわ」
「ジュリアス・ヴァルトハイツです。ミリア嬢、お会いできて僕もうれしいよ」
「レオンハルト・ヴァルトハイツだ……」
「本日は簡単な会食の後、例の発表の予定となっております。それでは、ごゆるりとお楽しみください」
父は2人に一礼しその場を後にする。ミリアはジュリアス殿下と話をしている。レオンハルト殿下は2人の様子をやや離れた場所から見ていた。
会食もある程度進んだころ、父が意を決したように皆の前に立ち声を発した。
「皆様、本日はお集まりいただきありがとうございます」
皆が父に注目し、場は静寂に包まれる。そして後ろにはミリアとジュリアス殿下の姿があった。
「本日は皆様にご報告があります。このたび、私の娘ミリアと第二王子殿下であらせられるジュリアス殿下が婚約することとなりました!」
わあっと会場が歓声に包まれた。周りから祝福の声が聞こえる。その後、皆が2人のもとに集まり、お祝いの言葉を口にする。
そのような中、少し離れた場所から様子を見ている人物がいた。レオンハルト殿下だ。殿下はほほえましい表情で2人を見つめている。
が、次の瞬間、急に殿下の表情が変わった。胸に手をやり苦しそうな表情になる。そして、あたりを見回し庭園へと移動していく。足取りは重く、歩くのも辛そうな姿に私はいてもたってもいられず彼を追いかけた。
「あの……大丈夫ですか!?」
レオンハルト殿下はその声に驚き、私を睨みつける。その体には黒いオーラのようなものがうごめいていた。
「俺に……近づくな……!!」
私はその言葉にびくっと反応し動きを止めたが、彼の表情はますます苦しそうな表情になり、もはや立っているのもできなくなったのか、ふらっと体が地面に傾き始める。
「あぶない……!」
私は必死に彼に駆け寄り、地面につく前に体を支えることができた。すると……
私の体からすさまじい光が溢れ出した。
「なに……これ……?」
その光は瞬く間に2人を包み始める。そして、レオンハルト殿下の周りにうごめいていた黒いオーラがすうっと消えていった。すると、レオンハルト殿下の苦悶の表情が落ち着いていく。
「こ……これは一体……?」
レオンハルト殿下は、自分の身に何が起こったのか理解できず自分の体を手で触って確認している。そしてふと私の顔を見ると、
「お前……その目……? それにこの光は!?」
「そ……それが私にも何が何だかわからなくて……」
「先ほどは青い目だったはずだ……色が金色に……」
「えっ……!?」
私は近くの噴水の水辺に行き自分の顔を確かめる。すると、私の瞳が金色に変わっている。
「……色が変わっている……」
私は改めて自分の体を確認すると、体の奥底から以前には感じたことのないすさまじい力を感じる。
「君は一体……? いや……とにかく助かった、ありがとう。俺はレオンハルトだ。君の名は?」
「私は……アネッサと申します」
「そうか、それでアネッサ嬢、先ほどの光だが……」
「殿下!!」
遠くから声が聞こえ、勢いよく駆け寄ってくる人物がいる。息も絶え絶えにしている人物を見てレオンハルト殿下が、
「なんだ、アルか……」
「なんだじゃないでしょう!! まったく……とてつもない光が見えて、そこに殿下がおられたので急いで駆けつけたというのに!」
「いちいちうるさい奴だ……すまないなアネッサ嬢。こいつはアルヴァイン。俺の補佐をしている」
「お初にお目にかかります。アルヴァイン・ベルンハルトと申します。」
うすい灰色の髪で眼鏡の奥には透き通ったエメラルドグリーンの瞳、洗練された完璧な所作で頭を下げる姿は、まさに一流の補佐官そのものだった。
「ア……アネッサ・ローゼンハイムと申します!」
あまりにも完璧な所作に慌てた私は、自己紹介を噛んでしまった。
「ローゼンハイム……では、こちらのローゼンハイム卿のご令嬢なのですね」
「あ……」
しまった。父に余計なことをするなと言われていたのに、慌ててローゼンハイムの名を出してしまった。
「……いえ……その……」
戸惑う私を見て2人は何かを察したようだった。そして、レオンハルト殿下が、
「先ほどは助かった。体はもう何ともない。ありがとう」
「い……いえ、そんな……」
「いや、君が来てくれなかったら他の者にも影響が出たかもしれない。本当に感謝している」
「は……はい」
「また会おう、アネッサ嬢。……行くぞ、アル」
「はっ」
「それではアネッサ様、失礼いたします」
そう言って2人はその場を後にした。私はその姿をしばらく見送っていた。
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