第7話:バザー準備
(第7話 2623字)
「そろそろバザーの品物作らないといけないね」
「今度の集まりにできる人は試作品持ち寄ろうか」
「私、皆に伝えておくよ」
◆:明日からまた集まりましょう。バザーの具体的な出し物と景品を決めましょう。
●■▲☆:了解
◆:香里さんはPC忘れずに!
☆:了解
明日からまた憂鬱な日が始まる。
LINEを見て、瞬間にそんなことを思ってしまった。
翌日、本部役員のための部屋と化した教室に行くと、すでに千鶴さんを除く皆が来ていた。
三人とも、手作りのおもちゃを持っている。
え?それなに?
「これ売れるかな?牛乳パックで作った車なんだけど」
「いいじゃん!かわいい!」
「これはどう?割りばしで銃作ってきた。これで射的ゲームとかやったらいいよね」
「それいい!私はね、手裏剣作って来たんだけど、段ボールに穴開けて、穴に向かって投げ込んでもらうの。点数も決めて、点数で景品決まるって感じで」
「お~っ!もうほとんどゲームコーナーできてんじゃん」
え、ちょっと、ちょっと。
そんなの準備するように言ってたっけ?
「あのー、私何も用意していなくて・・・」
盛り上がっていた三人が一瞬止まる。
「カオリンはいいんじゃない。PC業務があるから」
綾乃さんのフォローが入ったところで、千鶴さんが来た。
「あっ、皆持ってきたんだね。私もプラコップの中で棒に輪をかけるおもちゃ作ったんだけど、陽人が遊びすぎて壊した。スマホで撮ってあるから、それで見せるわ」
気まずくなる前に、皆の視線は千鶴さんのスマホの画面に移っていった。その後はバザーの内容の話し合いになった。
私が作った書類は皆のチェックが入って修正するパターンが続いているが、この状態にも慣れてきた。見せるまでもない簡単な文書なら、チェックを受けずに出してしまっている。
公園で花音ちゃんにケガをさせてしまった後、今度は花音ちゃんが陽人くんにケガをさせるということがあり、留美さんと優加さんは、前ほど責めてくる感じはなくなった。
私の方も、相手次第で態度が違うのを見て、顔色をうかがい過ぎていたかもしれないと反省した。
・・・優加さんが私と目を合わせない状態は、変わらず続いている。
6月になり、バザーの準備のためママたちは幼稚園に集まるようになった。皆でバザー商品となるヘアアクセサリーや巾着、おもちゃなどを手作りする。
私はビーズを通してブレスレットを作っている。本部役員の集まりより気が楽だ。
同じ机には、私と綾乃さんと年長ママの本田さんがいる。ビーズを通す作業は人気がないのか、ここだけ空いていた。
世間話をしながらやっていると、子どもの数の話になった。
「浅井さん家も一人っ子ですよね。弟妹ほしいと思いません?私もう一人、今度は女の子がほしいんですよ」
「もう一人いたらいいですよね。でもこればっかりは・・・」
「綾乃さんところはいいですよね。三人もお子さんいて」
「えっ!翔太くんと航太くんだけじゃないの?」
「小学校にお兄ちゃん、雄太がいるんだよ。男三人!」
「そうだったんだー、賑やかそうだね」
そんな話をしていると、見慣れない人が入ってきた。
幼稚園のママにしては年齢が上の気がする。
(人のことは言えないが)
留美さんが寄っていって挨拶している。
「カオリン、あの人わかる?10年前、みどり幼稚園のバザーを立ち上げたリーダーだよ。今みたいな形に本部役員を作り上げた人。レジェンドだね」
「バザーって、幼稚園がやることにしたのかと思っていた」
「違う、違う。子どもたちが楽しめるようなことをやるべきだって、園長先生とやり合ったらしいよ。他にもいろいろ保護者代表として、園に意見言ったって話だよ」
「すごいね。園に意見言うって・・・」
「園長先生はこの辺の大地主の娘だけど、レジェンドの家も代々、市議会議員やっていてこの辺りでは名家。在園中は、他にもバシバシ意見言ったらしいから、園長先生、今でもバザーや本部役員のこと嫌いだよね」
「え~!何代も前のことで、嫌いって言われても・・・」
「さてと、私はこれであがるね。翔太をお義母さんに預けてて、時間通りに戻らないと機嫌悪くなるから」
バザー準備への参加は、義務ではない。皆、手伝えるときに来て、自分の加減で帰っていく。本部役員だけは、毎日参加しないといけないけど。
綾乃さんが帰り、本田さんと作業を続ける。本田さんは話しやすい人だなと思っていると、帰りに自転車置き場で、再び話しかけられた。
「浅井さん、このサプリメントの試供品あげる。妊娠しやすい体質になるんだって。よかったら試してみて」
「え、あ、ありがとう」
サプリメント、いつも持ち歩いているのかな・・・?
次の日、バザー準備で幼稚園に行くと、役員しかいない早い時間なのに、本田さんが自転車置き場に立っていた。
「浅井さん、昨日のサプリメントどうだった?試してみた?」
「小さくて飲みやすかったです」
「そうでしょうー!私ね、その会社の特別会員で割引ききくから、一緒に注文してあげる。初回は半額で、次の月からも二割引きで注文できるから」
あ!そういうことかー・・・。
本田さんは、幼稚園でセールスしているんだ。
きっと皆知っているんだ。
「私は、すぐ続かなくなるから遠慮しときます」
粘られたが、ずっと同じセリフを言い続けていたら、諦めてそのまま帰っていった。
・・・朝から疲れた。
部屋へ行くと、綾乃さんがにやりとしながら近づいてきた。
「お疲れ!」
「綾乃さん、知ってたの?サプリメントのこと」
「本田さん、幼稚園のママたちには有名だよ」
「誰も言わないの?」
「言わないよ。稀にいいと思って注文する人いるからね。それにさ、緑が丘って狭いからさ、小中ずっと一緒だし、もめたくないんだよ。旦那の職場が同じ人も多いし。なんなら、引っ越し前にカオリンが言ってくれてもいいけど。薬剤師として効能が不明なものを配るのは見逃せないって」
「それはちょっと・・・・」
結局、皆ママ同士でもめたくないんだよね。
本田さんは、次の日には何事もなかったように、バザーの準備に来ていた。あの日は、新参者の私へのセールスを皆邪魔しないようにしていたらしい。次の日からは、本田さんの周りに普通にママたちが来て、お喋りしながら作業をしていた。
◆:そろそろグリーン会報チェックしないとね
■:最近チェック受けないで配布してることあるよね
●:グリーン会報はそういうわけにはいかないよ
◆:夏休み中に買い出しの割り振りも考えないとね
▲:領収書じゃなくてもレシートでOKね




