第6話:公園トラブル②
(第6話 1977字)
ピンポーン、ピンポーン。
マンションについてチャイムをならす。
守田と名前が出ているので間違ってはいないんだろうけど、本当にこの部屋なのかと緊張でドキドキしてくる。
しかもお菓子を持ってお詫びに行くのなんて初めてだ。
「はーい。え?香里さん⁉」
留美さんはビックリした顔でドアを開けてくれた。花音ちゃんも一緒だ。
花音ちゃんの膝は、絆創膏が貼られていた。
「花音ちゃん、さっきはぶつかってごめんね」
「理緒ちゃん、遊びに来たの?見て見てー!花音のクマちゃん可愛いでしょー」
全くかみ合っていない会話はさておき、私は慌てて言った。
「留美さん、花音ちゃん大丈夫?本当にごめんなさい。お医者さんへは行ったの?」
「え?あっ・・・そう、それ、大丈夫そうだから家で様子みることにした。わざわざ悪いね」
留美さんと話していると奥から小学校低学年ぐらいの女の子が出てきた。
「えっ、なに?花音ケガなんてしてたの?どんくさっ!これケーキ?やった!」
「こら!杏莉!」
「お姉―ちゃん」
ドタバタと花音ちゃんと杏莉ちゃんは部屋の中へ戻っていった。
「じゃあ、夕飯の支度しているところだから。またGW明けに」
ビックリするぐらいあっさり終わった。あの公園での緊迫感はなんだったの?でも絆創膏一枚でおさまる擦り傷で良かった。マンションの外に出ると力が抜けてへたり込みそうになった。反対に理緒はニコニコと元気になっている。
「ねえママ。さっきケーキ屋さんで動物チョコ買ったよね?あれ誰の?」
「理緒は本当によく見ているね。はい、これは理緒のだよ。理緒はよく頑張った」
「やったー!理緒のだと思ってたんだー」
夜、公園での出来事とお詫びの件をパパに話すと、パパはこれでもかというぐらい不機嫌になった。
「大げさじゃない?理緒を謝りにつれていくなんてやりすぎ。遊んでいる最中に、子どもがぶつかるとか気にしていたらキリがないよ」
自分でも後味悪かったところへ、パパの言葉は突き刺さった。
本部役員の集まりでダメ出しばかりされて、保護者同士だというのに卑屈になっている。
でもまだ始まったばかりなのだ。
気まずさを少しでも減らしておかないと、これからやっていけない。
GWは、幼稚園の知り合いと合わないように、遠い公園ばかりを選んで遊んだ。
あっという間のGWだった。早起きしたものの朝から気が重い。
幼稚園に行くことを思うだけで気が重い!やっぱり留美さんと顔を合わせたくない。優加さんにも。
いつもの時間に行くと、子どもを見送った後におしゃべりしている留美さんと優加さんに会ってしまうかもしれない。留美さんは几帳面だから、大体同じ時間に花音ちゃんを幼稚園に送ってくる。
考えた末、留美さんとタイミングがずれるように少し早めに理緒を送って行くことにした。
「おはようございます。理緒ちゃん、今日は早いのねえ。GWいっぱい遊んだ?」
「うん。恐竜公園とー、噴水公園とー、あとはー・・・」
理緒がしっかり私の服のすそを握っている。朝一番乗りで幼稚園に着いたせいなのか、休み明けで久しぶりのせいなのか、あかね先生はたくさん話しかけてくれる。理緒も久しぶりにあかね先生とお話するのが嬉しくて休み中に行った場所を片っ端から話している。
立ち去るタイミングを逃していたところに後ろから
「おはようございます」
という声がした。
「おはようございます。陽人くんおはよう。あら、おでこどうしたの?」
「あ、おはよう・・・」
あかね先生に続いて言いながら振り返ると、おでこにガーゼが当ててある陽人くんと、千鶴さんが立っていた。
「ちょっと水道のところでぶつけちゃって」
「うん、花音ちゃんに押されてぶつかったの。ゴンって」
ん?花音ちゃんって言った?
私の思ったことが顔にでてしまったようで、千鶴さんは陽人くんを教室に見送ってから話してくれた。
「休み中ね、偶然青葉公園で会ってね、花音ちゃんと杏莉ちゃんと遊んだんだよ。最初は一緒に遊んでいたんだけど、陽人、水道のところでアリの巣をみつけて、しゃがんで見入っちゃってさ。花音ちゃんと杏莉ちゃんも、最初は一緒に見ていたんだけどね、そのうち二人で追いかけっこしだして・・・で、杏莉ちゃんが花音ちゃんを捕まえるときに花音ちゃんが避けた反動で、陽人を押して水道のコンクリートにゴンっ。・・・まあ、子どもっていろいろ想定外のことあるからね」
・・・・・・。
「おはよう。陽人くん大丈夫?ごめんねー」
気づくと留美さんと花音ちゃん、優加さんと斗真くんが近づいて来ていた。留美さんは思い切り、すまなさそうな顔をしている。
「あ、全然平気。念のため縫ってもらったけど、普通に走りまわっているし」
「子どもっていろいろあるよねえ」
優加さんもなぜかすまなさそうな顔をしている。
これって、なんなんだろうな・・・・。
とりあえず、この件に関してはもう罪悪感を持たなくてよさそうだ。




