第12話:打ち上げ
(第12話 2398字)
バザーの売り上げは、例年の1.2倍だった。
総括のために集まった私たちは、集計結果を聞いて盛り上がった。
「すごいね。私たちが逆境を跳ね返した結果だよ!」
「でもさ、これ園長先生に言うの怖くない?時間短縮で売り上げ上がるなら、今後もそうしようとか言いそうじゃん」
「たしかに~。ま、その時は次の役員の人におまかせだけどね」
「ねえねえ、せっかくだから打ち上げしない?」
突然、優加さんが言い出す。
「いいねー。ランチでファミレスでも行く?」
皆賛成するが、優加さんは首を振る。
「違う違う。お店に行くんじゃなくて、皆うちに来ない?うちさ、地元の友だち集めて庭でよくバーベキューしているんだ。留美ちゃんはよく来てるよね。今度このメンバーで集まって、打ち上げバーベキューしない?子どもたちが幼稚園に行っている時間にさ」
「あ~、それいいかもね。優加ちゃん慣れてるし」
「皆で材料とか持ち寄って・・・」
「アルコールはダメだけど、ノンアルぐらい飲んじゃう?」
話はどんどん進んでいき、運動会の一週間後ぐらいに、優加さんの家で打ち上げバーベキューをすることに決まった。話が一区切りついたところで、私は本部役員のメンバーには早めに伝えておかないとと思い言った。
「もしかして三学期に迷惑かけることになるといけないから、先に言うね。うち来年度は都内に戻ることになった。もちろん、本部の仕事は最後までちゃんとやるけど、一応伝えておくね」
「え?そうなの。理緒ちゃんいなくなっちゃうの?花音寂しがるよ~」
「へー、都内か。そっかー、4,5年の出向って言ってたもんね」
「じゃあ、打ち上げ兼送別会?」
「まだ早いよ~」
運動会の日は雲一つない晴天になった。
この日の仕事は運動会委員がメインでするのだが、本部役員も当然のように仕事がある。先生たちも朝から走りまわっている。バザーと運動会の間が三週間しかなくて、園長先生が園の負担を考えてと言っていたのが、少しわかる気がした。
進行表の運動会委員のところに、サプリメント本田さんの名前があるのに姿が見えない。私は進行表を委員に配らないといけないので、キョロキョロしていたら、誰かのパパらしき人が寄って来た。
「すみません。本田です。家内はちょっと体調が悪くて」
「あ、大丈夫ですか?これ進行表です。お名前のあるところを確認して、時間になったらその種目の集合場所へ行ってください」
「わかりました。家内は病気ではないので良くなれば途中で見にくると思います」
あれ?それって・・・
「おめでたですか?」
横から綾乃さんの声が入って来た。
「ええ、まあ」
「おめでとうございます」
「ありがとうございます。今度は女の子なんですよ。一昨日わかったばっかなんですけどね」
本田パパの嬉しさが伝わって来た。嬉しいときって、聞かれてないことまで答えてしまうものなんだなと思った。本田パパはニコニコしながら、自分のシートの方へ去って行った。
それにしても綾乃さんズバッと聞いたな。
「綾乃さん、はっきり聞いたね・・・・・綾乃さん?」
横を見ると、綾乃さんは今までに見たことのない表情をしている。
「え?ああ、サプリメントの効果あったみたいで良かったんじゃない?私、もう持ち場に行くから」
綾乃さんの表情は気になったが、運動会が始まると、私はグリーン会報用の写真撮影をしたり、理緒と一緒に種目に出たりと忙しく、すぐにそのことは忘れてしまった。
運動会から数日後のお迎えのとき、早速優加さんからバーベキューの日程とそれぞれの分担についての話があった。
「じゃあ、明後日10:30からでいいね。私と留美ちゃんは食材の買い出しするから他をよろしく。後でレシート持ち寄って割り勘しよう」
残りの三人で相談した結果、千鶴さんはフルーツと何かおつまみを、綾乃さんはスイーツ類を、私は飲み物を買っていくことになった。
家に帰ると、優加さんからLINEがきた。
▲:うちは、なかよし公園のブランコ側の後ろです。わからなかったら明日送迎時聞いてください。今から斗真と悠真をプール教室に連れて行きます。
◆:わかるよ。ありがとう。うちも今日振替なのでプール行きます。またあとでね。
■☆:大丈夫、わかります。
飲み物は、どれぐらい用意したらいいのだろうか。ノンアルを用意しておかないといけない。明日中に用意した方がいいだろう。今のうちに皆の希望を聞いておこう。
☆:飲み物希望ありますか?ビール系、カクテル系など。他にも希望あればお願いします。
しばらく返信を待ったが既読にならなかった。先程のやりとりで一旦終了しているから仕方がない。
いろいろ種類を買っておけばいいかと思い、買いに行こうとしたところでスマホがなった。
返信が来たと思って画面を見ると、表示された文字は即送信取り消しになり、違う文面に変わった。
えっ?
・・・・・今の言葉・・・私に向けたんだよね。
私はしばらくLINEを開けなかった。私は送信取り消し前に表示された言葉に気が付かなかったことにしようとしていた。
次の日、理緒は熱を出した。バザーや運動会の準備で理緒を十分にみてあげていなかったことを反省する。
幼稚園に欠席の連絡をした後、本部役員のメンバーにバーベキューの欠席を連絡した。
☆:理緒が熱を出したので、明日のバーベキュー欠席します。飲み物用意できなくてごめんなさい。
▲:気にしなくていいよ。私と留美ちゃんで買い出しの時一緒に用意するから。それよりお大事に!
●:残念だけど、お大事にね。
他の二人もお大事にと理緒を気遣うLINEがきた。
バーベキューに行けなくなったことにホッとしている。
結局、送信取り消しの言葉に従ったみたいになった。
この労りの文面だけ見ていると、本当は、本部役員のLINEグループに送信するつもりじゃなかったのでは?という気さえしてくる。
でもあれは、私に向けたものだ。
”ウザっ!来んなよ!”
”コーラもお願いします”




