第11話:バザー
(第11話 2070字)
バザーの日は、良く晴れた暑い日になった。
来場者も運営側も汗をかきながら、半袖で動き回るので、まるで夏祭りのようだ。
みどり幼稚園のバザーでは、手作り品を売るだけでなく、各家庭で必要のないお中元やお歳暮、引き出物などを破格の値段で売り出すので、毎年これを目当てにしているご近所の人もいる。
子供服のお下がりのコーナーも人気だ。
ゲームコーナーは言うまでもない。子どもたちがお小遣いを手に集まってくる。ゲームコーナーの係をしていると、私も縁日の屋台の人になったみたいで楽しくなってくる。本当は、私は焼きそばコーナーの担当だけだったのだが、サプリメント本田さんが体調不良ということで、助っ人として入った。
「香里さん、手が空いたから変わるね。香里さんは次、予定通り焼きそばコーナーをお願い」
留美さんがやってきて、交代してくれる。本音を言うと、このままゲームコーナーを担当していたい気分だ。この時間の焼きそばコーナーの担当は、優加さんと私の二人だ。お客さんがひっきりなしに来てくれることを願う。
焼きそばコーナーに行くと、優加さんと同じ年ぐらいの男性二人と女性一人がいた。女性は売り子側の方に立ってコーラを飲んでいる。
誰?保護者?
「あれ?香里さん来たの?別にいいのに。彼ら地元の友だちなんだけど、手伝ってくれるっていうし」
「え、いや、そういうわけにはいかないから」
戸惑っていると、男性一人が気を利かせたのか、話に入ってきた。
「ほら、どいたどいた。ママさんの邪魔になってるって」
「え~、邪魔なの~?なんだ、せっかく屋台のお姉さんできると思っていたのに」
「屋台のおばさんだろ!」
「ひど~い!」
「まあ、屋台のおばあさんじゃなくてよかったじゃん」
今、優加さん、ちらっと私を見たね。
焼きそばのパック詰めをしていると、お客さんがやってきた。その後も彼らは居座って、お喋りしたり、客引きをしていた。
私は自分の作業をしながら、優加さんたちを観察していた。優加さんを最初見たとき、派手な美人だなと思った。優加さんの地元の友だちも、派手な雰囲気だった。皆結婚指輪をしていたり、会話からパパママなんだというのがわかる。そして学生時代、いわゆる一軍だった人たちかなと思った。この人たちは、留美さんとも友だちだと思うが、留美さんは派手ではない。でもずっと生徒会長をやっていた留美さんは特別枠なのだろう。
私の時代には一軍二軍なんて言い方はなかったけど、私は二軍か三軍ぐらいになるのかな?
変なことを考えているうちに、私の担当時間は終わった。
コーナー担当が終わると、次はグリーン会報用の写真を撮りに行く。
理緒は、パパと一緒に会場を回っている。途中すれ違うと
「ママー!見て見て!これ射的で取ったの!こっちが手裏剣で取ったの」
手には、景品とお菓子が山ほど握られている。どんだけやったのかな?パパに視線を向けると
「まあ、いいじゃないか、たまにはね」
と流された。理緒がゲームコーナーに集中していてくれると、パパは楽なのだろう。
とにかく私は、撮り忘れがないようにバザー風景を撮影しないと。
撮影して回っていると、園長先生が誰かと話している。頭を下げて横を通り過ぎる。
「園長先生、みどり幼稚園のバザーは、毎年盛大ですね。緑が丘を盛り上げてくださってありがとうございます」
「区長さんにそうおっしゃっていただけると嬉しいですよ。みどり幼稚園の自慢のバザーですから」
えっ!
どの口が言う!?
・・・・園長先生には幼稚園としての外向きの顔があるらしい。
バザー二日目、15:20になった。
#ご来場の皆様、あと10分でバザー終了となります。お帰りのさいは、お忘れ物のないようにお願いいたします。各担当コーナーの責任者は、片付けと集計の準備に入ってください#
事前のトラブルはあったけど、ふたを開けてみれば、バザーは大盛況。時間を短縮した分、却って人が集中して賑うこととなった。売上も、集計前だが例年より上だとわかる。
来場者が全員、園の外へ出た後、一斉に片付けと清掃が始まった。優加さんと綾乃さんは、各担当コーナーの責任者とともに売上の集計をしている。
私が下駄箱のところでモップをかけていると、あかね先生もモップを持ってやって来た。会議室であかね先生の目に涙が滲むのを見てから、私の中に気まずさがあった。あかね先生も私も、何ら変わることなく、普通に送迎時接しているのだが・・・。
無言でモップがけの作業をしていると、ふいにあかね先生が言った。
「バザー、やっぱり二日間やってよかったですよね。子どもたちすっごく楽しんでいたし、地区の人たちにも感謝されて」
「ええ、本当に良かったです。でも先生たちにはご負担をおかけしてしまって」
「いえ、そんなことはないです。いつもと変わらないです。それより本部の人たちの負担が大きくて」
「あ、いえ、とんでもない」
「今度は運動会ですね。よろしくお願いします」
「あ、よろしくお願いします」
あかね先生の方から、声をかけられてしまった。
この後は、あかね先生と一緒にいても気まずさを感じることはなくなった。




