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恵子は桃より顔一つ分身長が低い。


うまい具合にちょうど掴みやすい場所で震えてブルブルしている恵子の頭髪を

ガシッと鷲掴みにし、グラグラと振り回すように動かしながらすごんだ。



「次はあんたをめった刺しにしてやろうか? 

ねぇ、どこがいい、どこ刺されたい? 


あんたのような平気で人を不幸にして歩く女はさぁ、歩けないように

したほうがいいと思わない? 

ねぇ~、恵子ぉ~、あなたもそう思うっしょ?」




桃がどやどや(どうだ、どうだ)と、囁き声ですごんでいる間に、

カフェの店員が俊の異常に気付いたようで周りはだんだん騒がしく

なっていく。



そんな中、桃の脅しは続く。

 

「どうなの? ちゃんと答えなよ。あんたもそう思うよね」


「ごっ、ごめんなさい。もう水野くんを誘ったりしないから……ゆ、許して」


周囲の喧騒もうっちゃり、桃は恵子を、髪を掴んだまま店の端に引っ張って

いき、脅し文句を吐き続ける。



「今度誰かに悪さしてるの見つけたらただじゃおかないから。

その自慢の顔に薬品ぶっかけてグチャグチャにしてやるから」


話してるうちに周囲が救急車のサイレンの音、パトカー音と、騒がしくなっていくのが分かる。



この時の桃は、すでに耳に届いていた遠くに聞こえるサイレンの音で、

俊がすでに救急車で運ばれるであろうことには気付いていた。


だがそれを知り、ほっとしたのか残念に思ったのか……

この時の桃には、もう何を? と考える力など残ってはいなかった。




多分もう少ししたら自分は逮捕される、それだけは分かった。


そう思う間もなく、これを最後の捨て台詞に恵子の目の前で、

桃は駆けつけた警察官に拘束された。



その後、桃はパトカーの後部座席に乗り込み座った。

隣には婦警が座った。


いろいろ質問されたが、自分でも分かるほど精神的にきていた。

婦警の質問など耳を素通りで、頭の中にあったのはただひとつ。


--

どうでもいい旦那だけど、籍はガンとして抜かないでおいて恵子と会うって

どういう了見ですかっていう話ですよ。--


ちゃんと自分の思う通り落とし前をつけたことで、それまで張りつめていた糸が

ブチッとパトカーの中で切れた。


もう、どうにでもなれっ。


警察署に着く前に意識を失い、桃はそのまま苦しみも何もない世界へと

雪崩れ込んでいった。



そして……次に目覚めた時には精神病院にいたのだった。


(最初のシーンへと)

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