51 ◇切ない時間
2日前号泣していた俊が、週末誘ってきた。
およそ週2ペースの夫婦生活がどうしてだか先月の真ん中辺りからなかった
こと、そしてほんの2日ほど前に自分がしているモデルの仕事のことで夫が
辞めてほしいと懇願しながら泣いたということもあり、このような誘いがある
などとは……。
桃は、驚きを隠せなかった。
だってこんなこと露ほども自分は考えていなかったものだから。
この夜も自分の方が先に奈々子と入浴を済ませ、久しぶりにテレビを見ながら
晩酌する夫の姿を横目に奈々子に添い寝し、その後、寝室に入った。
『さぁ~てとっ、明日は土曜で夫も休日だから朝寝ができるぅ~』
などと、翌日の朝寝を楽しみにしつつ、桃は毎晩続けているストレッチを
ベッドの側に敷いてあるヨガマットの上で始めた。
結婚して主婦になるとなかなか朝寝なんかできない。
今でこそ土日の朝はゆっくりできるようになったけれど、それも娘次第の
ところがある。
娘の奈々子が朝遅くまで眠ってくれるようになったのは最近のこと。
娘が生まれてから最近まで、寝たい時に寝られず食べたい時に食べられず、
小児科にはしょっちゅうお世話になったりと、子供ひとり育てることの
なんと大変なことか。
……などと子供を産んでからの怒涛の日々を思い起こしつつ、ストレッチを
続行。
いろいろあり過ぎて初めて授かった奈々子の子育ても全力で楽しめないのは
残念だなと思ったり、そんなやこんな、考え事ををしているうちにルーティンの
ストレッチが終わり、体のほぐれた桃はベッドに潜り込んだ。
◇ ◇ ◇ ◇
ちょうどそのタイミングでカチャリと部屋のドアノブを動かす音がした。
俊は晩酌をしていたはずで、寝室に来るのはもっと後だとばかり勘定していたので私は焦った。
なんだか、寝室で顔をまともに突き合わすなんて嫌だった。
それで、寝た振りをすることにした。




