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✿ 桜の華 ― *艶やかに舞う* ―   作者: 設楽理沙


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50 ◇持て余す感情



 先に入浴を済ませた桃は、あのあと俊がどうしているのか確かめる気持ちにはなれず、そのまま直接寝室へ入り、すぐにベッドへと潜り込んだ。




 しばらくすると物音が聞こえてきたので、俊もお風呂に入るのだなとうつらうつらした状態でそう思い……そのまま寝入ってしまった。


 気がつくと朝だった。

 横を向くと俊の顔が見えた。



 骨格とすっと整った高い鼻は男性らしい造形をしているのに、キレイな肌の

せいなのか、全体に甘めに見える容姿のせいなのか、目を閉じている寝顔は

美しかった。



 この顔で号泣していたなんて……。


 見たかったような……とも思うが、きっと見なくてよかったのだと思った。



 こんな造形の美しい顔を苦しませ歪ませているのが自分だなんて、

思いたくはなかったから。



 もしも、見てしまったら自分の中で、何かが別の形で崩壊してしまいそうだった。


 あまりに自分の心の奥深く、そう、魂が揺さぶられ、更に苦しみを

背負わされそうで怖かったのだと思う。


 持て余す感情なんていらない。


 夫の──

俊の号泣するところに遭遇してしまった桃の精神状態は、少し不安定になっていた。


 対して俊はというと、号泣した翌日からこれまでと変わりなく

通常運転に見える。


 少なくとも桃からはそのように見えた。


 妻の桃からそんな風に見られていた当の本人はというと、結構大泣きして

自分の気持ちを吐き出したことで多少すっきりしていた。



 ……とは言え内々では、どうしても桃に裸婦モデルを辞めてもらいたくて、

どうにかならないものだろうかということを模索し悶々としていた。


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