23 ◇想い
桃「今日、はじめてのモデル体験しちゃった」
桃美『ねぇ、どうだった? 緊張した?』
「少しね。でもどうってことなかったわ」
『で、今の気持ちはどう?』
「可もなく、不可もなくってところかな。
ただ新しい環境に飛び込んだことでの多少の緊張感があって
精神の状態は悪くはないっていうところかしら」
『なんか、不完全燃焼気味に聞こえるんだけど……』
「だって、戦場に兜と甲冑付けて駆けつけてみれば、へなちょこ野郎ばかりが
待ってたぜ、の心境だもん。
女子も男子もって言えるぐらい相手、みんな子供で、
ガクッてかんじ。
考えてみれば学生相手のモデルじゃぁそうなるわよね。
ちょっと迂闊だったわ、この結果は……」
『なぁ~に、またまたぁ~。意味深なこと言い出しちゃって』
「だって想像してみてよ。
目の前の学生たち、考えてみればほんのちょっと前には
ランドセル背負ってたわけよ。
私が中学生の時には彼らは幼稚園くらいでしょ。
何かそんなガキんちょにジトーってどんぐり眼で見られてもねぇ、
屁でもないって感じよぉ~」
『やだー、もう少しお上品に願いしますー』
「はっきり言ってスパイスのない料理なのよね。
もう少し刺激が欲しい~」
『……』
勝手なことばかり桃美相手に話をしていたせいか、彼女は最後は
無言で後ろに隠れてしまった。
はぁ~、この仕事ずっとやり続けて意味あるのかななんて、一回目から
考え込んでしまった。それでも私はそれからも週一で大学に通った。
❀そして……初秋の頃に始めたバイトも三か月が過ぎ、気持ちの落ち込みは
幾分か薄らいだものの、どこかすっきりしない日々が
続いていた。
そんなとき、今の大学の仕事を辞めて別の職を探してみようかと思い始めた
矢先に、植木さんから別口のバイトの話が転がり込んできた。
その話というのは、植木さんの友人のそのまた友人かららしい。




