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「ねぇ、どうだった? 緊張した?」
『少しね。でもどうってことなかったわ』
「で、今の気持ちはどう?」
『可もなく、不可もなくってところかな。
ただ新しい環境に飛び込んだことでの多少の緊張感があって
精神の状態は悪くはないっていうところかしら』
「なんか、不完全燃焼気味に聞こえるんだけど……」
『だって、戦場に兜と甲冑付けて駆けつけてみれば、へなちょこ野郎ばかりが
待ってたぜ、の心境だもん。
女子も男子もって言えるぐらい相手、みんな子供で、
ガクッてかんじ。
考えてみれば学生相手のモデルじゃぁそうなるわよね。
ちょっと迂闊だったわ、この結果は……』
「なぁ~に、またまたぁ~。意味深なこと言い出しちゃって」
「だって想像してみてよ。
目の前の学生たち、考えてみればほんのちょっと前には
ランドセル背負ってたわけよ。
私が中学生の時には彼らは幼稚園くらいでしょ。
何かそんなガキんちょにジトーってどんぐり眼で見られてもねぇ、屁でもないって感じよぉ~」
『やだー、もう少しお上品に願いしますー』
「はっきり言ってスパイスのない料理なのよね。
もう少し刺激が欲しい~」
『……』
勝手なことばかり桃美相手に話をしていたせいか、彼女は最後は
無言で後ろに隠れてしまった。
はぁ~、この仕事ずっとやり続けて意味あるのかな、なんて一回目から
考え込んでしまった。
それでも私はそれからも週一で大学に通った。
そして……初秋の頃に始めたバイトも3か月が過ぎ気持ちの落ち込みは
軽減したものの、どこかパッと晴れない気分? っていうのかなぁ、
ひとまず今の大学の仕事は辞めて他を探してみようかと思い始めた頃に
植木さんから別口のバイトの話が転がり込んできた。
話は植木さんの友人のそのまた友人かららしい。