閑話 女神ヴィヴィエルの憂鬱3
どうしようどうしましょうどうればいいーっ?!
魔王討伐後のゼレスに転生者を送ったというか送られるのを止めれなかったことが、キラキエル先輩に知られています。
何故キラキエル先輩はこのことを知っているのでしょうか。もしかしてヨクエル先輩が?
いや、ヨクエル先輩は私たちの仕事部屋で他の業務をしています。もしかして、私が書類の提出を頼まれて部屋を出た後にキラキエル先輩が訪れた? いや、それならその場でヨクエル先輩が詰められているはず。
じゃあ、いったい何処から?
いや、それよりも今はこの場をどう乗り切るかが大事です。
ラファエルさまにキラキエル先輩を相手に、上手く立ち回らなければいけないから。……いや、むりムリ無理muri!
この二人相手に、私なんかがどうこうできるわけありませんよ!
キラキエル先輩は私と同じ天界学校の主席卒業ですが、レベルが違います。私は運が良かっただけで、キラキエル先輩は実力でその座に就かれていました。
そしてラファエルさまは、女神という職のトップである〈統括〉の補佐を任されている五人の内の一人であり女神達をまとめる大幹部です。
そんなお二人に私がどうこうできるわけがありません!
ですがこのまま何もしないのは良くありません。少しでも良い方向に話をもっていかないと、私とヨクエル先輩のこれからが……。
とりあえず、誤魔化す方向でいきましょう。
「い、いやだなーせんぱい、なななんのことですかー? ちょっとよくわからないんですけど、キラキエルせんぱいは、どこでそんなはなしをきいたのですかー?」
「んー、何処ってそのゼレスから祈る声が聞こえてぇ、その内容が『女神ヨクエルからはぁ、魔王がいる世界って聞いていたのにぃ、魔王が倒されてた』って愚痴をヨクエルに言って欲しいって内容だったのぉ」
「へ、へぇ〜、そ、そそんなこととがあったんですね〜、へえ〜」
……これはマズイのでは? まさかの当事者からの報告とは思いもしませんでした。何人も転生者を送りましたが、その本人から直接の苦情が来るとか、女神史上初じゃないですかこれ?
なんてバカみたいなことを考えてたら、キラキエル先輩からの追及がきました。
「ヴィヴィちゃんはぁ、このことを知らなかったのぉ? ヨクエルの補佐としてぇ、ヨクエルと一緒に仕事してると思うんだけどぉ?」
まままままずいですっ! 確かに、確かに私も知らないとおかしい話ですこれっ。
ですが今更知ってましたと言うのも、何故嘘をついたのかと問い詰められてしまいます。
ならここは、このまま誤魔化し通すしかっ。
「え? あ、ももしかしたら、私がお使いを頼まれてた時にそんなことがあったのかも、知れませんねえ〜」
「でもぉ、ヴィヴィちゃんさっき話してる時ぃ、ヨクエルに頼まれて書類を出してきたところってぇ、言ってなかったぁ? それってさぁ、タイミング的にぃゼレスの業務完了の書類だったんじゃないのぉ? てことはさぁ、ヨクエルとゼレスの会話はあっただろうしぃ、ヴィヴィちゃん賢いからぁその書類渡された時にでもぉ、いつゼレスに転生者を送ったのかとかわかるよねぇ。それでぇ書類出した時にでもぉ、ゼレスの魔王がいつ討伐されたとかぁ、書類上やその他に過ちとか無いか確認してから帰るよねぇ。事務のロクワエルさんがぁ、ヴィヴィちゃんは真面目で細かいことにもよく気付くって褒めてたよぉ。ヴィヴィちゃんはよく謙遜するけどぉ……、私もヴィヴィちゃんは優秀な後輩だって知ってるから、通常時のヴィヴィちゃんならこんな指摘されなかったんじゃないかな。ということはだよ、何かしらのアクシデントがあったんじゃないかなって私は、ん……と、あーしは思ったんだけどぉ、どうかなぁ?」
「あ、えっと……、その……」
これは、もう言い訳できないやつですね。
流石はキラキエル先輩です。わかってた上で私と話して、確証を得てから切り出すなんて。私には反論する余地すらありません。
更には、そんな中でも私のことを褒めてくれるなんて。キラキエル先輩、違います、私はそんなできた後輩ではないです。ただ怒られたくなくて、責任から逃れたくて奔走してただけなんです。最低な奴なんです私なんて。
経緯はどうあれ結果が知られているなら、もう隠すこともないですね。
それに、このままお二人の時間を奪い続けるのは申し訳ないです。
ヨクエル先輩には悪いですが、本当のことを話そうと思います。それで女神の職を失っても、自分がしでかしたことなので仕方ありません。
「はい…………、そう……です。ゼレスに……転生者を、送り……ました」
言葉を紡ぐほど、消え入りそうな声になっていきます。思ったような言葉になりませんでした。
「そっかぁ。ありがとぅヴィヴィちゃん、正直に話してくれてぇ」
こんな時でもキラキエル先輩は私に笑顔を向けてくれます。
こちらこそありがとうございます。この人はいつだって、いつだって、優しい。
私の頬を一筋の雫が流れます。
それを見たお二人に反応がありました。
キラキエル先輩は慈愛のような微笑みを浮かべ、ラファエルさまは溜息を吐きながらもいつもの微笑みではなく、何かに挑戦する時のようなキリッとした表情をされています。
馬鹿な私でもわかります。お二人は何かされるおつもりでしょう。
いけません、私なんかのためにお二人を巻き込むのは。
止めなければと思っても、声が出ません。
やはり私は、何もできないダメダメ天使です。本当にどうしようもない……。
自分で勝手に自分自身に落胆しているとキラキエル先輩とラファエルさまが会話を終え、こちらを見ます。
「ヴィヴィエル、先ずはヨクエルの所へいきます。理由はどうあれ、当事者の意見を聞かないことにはどうにもできません」
「大丈夫だよぉヴィヴィちゃんー、あーし達に任せてぇ」
自身の胸をトンと叩き、キラキエル先輩は私なんかに大丈夫と言ってくれます。それだけでうじうじしていた私の気持ちが晴れていく気がしました。そして、このお二人のために自分も力にならなくてはと思いました。
私達三人は、私とヨクエル先輩の仕事部屋へ向かいます。
ヨクエル先輩……、お願いですから正直に話して下さいねっ。お願いしますよっ。




