電気纏い系少女の高鳴り
オレの名はレオナ・イーリンだ。
スブリム王国軍第三兵隊の隊長をやっている。
オレは最近、ある人物のことが気になっている。それはオレの部下で第三兵隊の副隊長を任せているユウだ。この辺では珍しく、名と姓が逆なんだと。姓はハナブサだ。
そのユウに対して、よくわからないのだが気になってしまう。
出会いは突然だった。
巡回の途中で部下のゴリとサルロから怪しいヤツがいると報告を受けた。オレは部下達を連れ、商業区を捜索した。
すると冒険者ギルドの前でオレたちに近づいてくる男がいた。
オレはその男に声をかけた。
「何見てんだゴラァ、ブチ転がすぞ!」
するとゴリとサルロ曰く、こいつが逃した怪しいヤツとのことだ。
オレは何の用かと尋ねる。
「てめぇは何だ? 何で第三兵隊の周りをうろちょろしてやがる?」
その時、ビビッときた。こいつは第三兵隊に入りたいんじゃないかと。
そしてそこからその男、ユウはオレ達第三兵隊の仲間になった。
ユウが第三に入った翌日、王城から呼び出しがあった。何でも王都近郊の森にドラゴンが現れたらしい。
「━━うむ、そうだな。イーリン第三隊長、今回の任務は第三兵隊に任せる。吉報を期待する」
総隊長からのご指名だ。
ドラゴンの対処を第三兵隊がすることになった。
オレと副隊長のオメガは急ぎ兵舎へと戻り、隊員達を召集する。
そして今回の討伐任務に参加する百人を選抜する。その中にユウも入れた。
だがユウは初の任務なため、少しだけ配慮する。ゴリやサルロ達にもそれとなく伝えておく。
ドラゴン討伐では、ユウのいる第二分隊が先にドラゴンと接触した。
ドラゴンの咆哮と共に上がる発煙筒の煙。
第一分隊全員で行くのには時間が掛かってしまうため、オレが一人で先行し救援に向かう。
駆けつけた時、ドラゴンの凶悪な口がユウへと向かっていた。
オレはギフトの力を用いてドラゴンまで一瞬で距離を詰め、左目を斬り裂いた。
オレの登場に安堵したのかユウは笑った気がした。
怯んでいるドラゴンに追撃を仕掛けるが、決定打にはならなかった。
ドラゴンからの攻撃を躱し続けるがいつまで保つかわからない。オレの攻撃は致命傷にならないのに、ドラゴンの一発は一撃必殺の攻撃だ。分が悪過ぎる。
すると突然ユウがこちらに向かって叫ぶ。
「レオナ! ドラゴンの体にある古い傷を狙え! そこならもっと深くまで届くはずだ!」
キズっ!? あそこか!
「お前ら! レオナの援護だ、隊長が気持ちよく攻撃できるようにサポートするぞ!」
ユウは他の隊員達にも指示を出し、オレを援護してくれる。
そしてドラゴンがユウを狙った一瞬の隙を狙い、ドラゴンの天柱を斬り裂いてやった。
何とかドラゴンを倒すことができた。それもユウのおかげだ。オレ一人なら勝てなかったかもしれない。
その後オレは、ユウにオメガの代わりに副隊長をやってくれとお願いする。ユウは快く引き受けてくれた。流石オレが見込んだ男だ!
そして、ドラゴンの件と併せてユウが副隊長になったことを王城へ報告しに行く。
そして何事もなく報告を終え兵舎へ帰ろうとした時、同期のチルロットに呼び止められた。
だがそこでとんでもないことを言いやがった。
チルロットの所の副隊長(女)がユウのことが気になると。……気になる、だと?
それはどういう意味だ、とチルロットに確認するが要領を得ない。
同郷の出とか言っているが、それはナンパする時に使う常套句じゃねぇか! そんなこと言ってくる女をユウに近づける訳にはいかない。
オレは更にチルロットに詰め寄った。
だがそれがいけなかったのか、オレとチルロットが話している内に、第五の副隊長(女)がユウを飯に誘ってやがった。……ぶっ転がしてやろうか……。
そしてチルロット達と別れた後の飯の時にも声を掛けてきた女がいた。
キラキラ教の巫女を名乗る女だ。
黒髪で白のフリフリの服を着ている胡散臭いヤツだ。
ユウは何故か女を惹きつけてしまうようだ。変な虫がつかないように気をつけないといけない。
い、いや、惹きつけられるって、べべ別にオレはそんなことないけどなっ! う、うるせぇ黙れぶん殴るぞっ!
とまぁ、そんな訳でキラキラ教の巫女にも睨みを利かせ追い払った。
ユウに女共が近寄らないよう、オレが側で見張ってないとな!
そして直近の話だ。
魔族の画策で多くはないが王都の住民が犠牲になった。
その事件の対応中にオレは負傷してしまった。
油断してしまったようだ、情けねぇ……。
そして動けないオレの代わりにユウが頑張ってくれた。
オレを一撃で動けなくさせることができる相手に、正面から戦っている。
ユウは自分の剣が折れた後も、オレの双刀『四仙白虎』の一本を扱い応戦している。
ユウは戦いのセンスがあるかもしれない。初めて持つ武器であそこまで戦えるのだ、天性の才能だろうか。
だがそれでも倒すことができない。黒い何かの腕が四本から二本になり肥大化した。
マズいと思い、動かない体に鞭を打ち、動かせる右腕でもう一本の四仙白虎を黒い何かに向かい投げつける。
肺か気管を傷付けていたのか、投げた反動で咳込み血を吐き出してしまう。
だがユウのためにはなったらしい。
投げた四仙白虎は黒い何かの足に突き刺さり、ユウがそれを引き抜き本来の四仙白虎の姿で敵の首を斬り飛ばした。
それを見てユウが勝ったこと、そして生きていることに安堵した。
事件の後、オレはひと月の間安静にと言われた。不服ではあるが、自分の弱さが原因のため大人しく従っておく。
傷が治り医者から復帰の許可をもらった後、直ぐに第三兵隊の兵舎へと向かった。
久々のユウに会えると心弾む中、隊長室の扉を開けると━━何で第五の副隊長(女)が居るんだよ!
この女が居るのは我慢ならないが、今回は助けてもらったのも事実。……今回だけは特別に許してやる! だが次はないからな!!
はぁ、やはりユウに変な虫がつかないように、隣でオレが睨みを利かせておかないといけないようだな! そしてオレとユウが……、いやっ、何でもない! 何でもないったらないんだ!!!!!!
これからもオレとユウの物語は続いていく。『オレ』と『ユウ』の、な!
スブリム王国の王都にある教会。大きくないがその威厳ある佇まいは見る者に敬意を抱かせるには充分な外観をしている。女神キラキエルを信仰するキラキラ教の教会だ。
この教会の礼拝堂には美しいステンドグラスがある。その礼拝堂に今、二人の人影があった。
一人はキラキラ教の司教達のトップである筆頭司教のパムパウム・ペッチュリン。
そしてもう一人はキラキラ教のトップで巫女のクロノワール。
「そろそろ件の人物に来てもらわなくてはのぉ。最近では魔族の策謀を打ち破ったそうではないか、それを口実にキラキラ教から表彰があるとか言って呼び出すのはどうじゃ?」
「それは良いですね。あの方はキラキエル様からの覚えがめでたいですからな。何とかキラキラ教にお越しいただいて、あわよくばキラキラ教に入教していただきたいものです。神託を受けた信者はあまり多くないですからね、彼が入教すれば信者達の信仰も厚くなることでしょう」
「それだけではないのじゃ。魔族を追い払った事といい、周囲からの第三兵隊の評価が高くなっておる。その副隊長がキラキラ教を信仰していると広まれば、入信者も増えるじゃろうて。そうなれば教会も増やせ、キラキエル様の名をより一層広めることができるのじゃ。かかか、ハナブサユウよ、これもキラキエル様の思し召し、なのじゃ。主が来るのを楽しみにしておるぞ、かーっかっかっか」
魔族の謀略を見事に打ち破ることはできた。だが、また新たな試練が英雄へと降りかかろうとしてた。
そしてそれを知る者は誰も彼も、神でさえも知らないのであった。




