とある少女の新生譚2
目を開けると何もない真っ白な空間にウチは居た。
「ここどこなん? 何でウチこんな所に……」
キョロキョロと周りを見渡す。本当に何もないただ白いだけの空間。
「っ、ちょい待ちーや! ウチ刺されたよな!? ウチ生きてるん!?」
刺された箇所を確認するが傷ひとつ無く、綺麗な身体だった。
「よ、よかったぁ〜。そ、そうやんな、急に刺されたりなんてせえへんよな。あれ夢やったんやなー」
「夢ではありません」
いつの間にか女性が居た。
綺麗な人やなって思った。けど直ぐに違和感に気づく。女性の背中には純白の翼があったからだ。
「キサラギイロハさんですね?」
「え、はい、そうですけど」
何でこの人ウチの名前知ってるんや?
疑問に思っていると、女性は話を続ける。
「貴女は亡くなってしまったのです。あの通り魔に刺されて命を落としました」
……あー、やっぱりあれはほんまやってんな、そら凄い痛かったからなー。
「意外と冷静なのですね。亡くなってしまったというのに」
「まぁ何ていうか、生きている意味がわからんかったから、思ってた以上に未練がなかったんかなーって」
「そうなのですか?」
「んー、なんか親とかに言われたまんまのことやってたから、ウチである必要ってあったんかなーって。決められた道歩いてるだけなんやったら面白くないやん。あーあ、もっと刺激のある人生やったらなー」
今更何かを後悔しても遅いのだが、もっと自分に素直に生きていけばよかったなって思う。
「ふふ、なるほど。今回、貴女が選ばれたのも理解できます」
「ん? 何のこと言ってはるんです?」
「貴女にはこれから選択をしてもらいます。ひとつは運命を受け入れて死後の世界へ行くか。もうひとつは地球とは違う世界、異世界へと転生するかです」
んーと、この人は何を言ってはるん?
「いきなりの話ですから困惑されるかもしれません。要は別の世界で、新たな人生を送らないかっということになります」
「えーと、その、別の世界に生まれ直すってことですか?」
「本来ならばそうなのですが少し事情がありまして、今のお姿のまま異世界へと向かってもらいます」
「あー、なるほど。……それって転生って言うより転移なんじゃ━━」
「転生です」
「あ、えっと」
「転生です」
「はい……」
「何故今のお姿のまま、異世界へ行くことになるのかのご説明をさせて頂きますね。行ってもらう世界は【ゼレス】と言います。そのゼレスには魔王がいて、悪逆非道を働き人々を苦しめているのです。その魔王を討伐するためには、赤ん坊として生まれ変わってしまうと時間が掛かってしまうため今のお姿で転生してもらうのです」
「その魔王っていうのを討伐したくないって言ったら、どうなります?」
「どうもしません。そのまま死後の世界へ向かってもらいます」
「なるほど、生き返りたいなら魔王をやっつけてその世界を救えってことですか」
「はい。理解が早くて助かります」
目の前の女性はニコッと笑う。
「それと、危険な魔王の討伐に向かうのです。何か力がなくては成し得ることはできないでしょう。ですが安心してください。異世界ゼレスには地球と違い、異能が存在するのです。その名もギフト、神からの贈り物です」
「ギフト?」
「はい、ギフトです。ギフトとは、ゼレスに生を受けた時に一つだけ与えられるのですが、転生される方には転生時に与えられます。しかも転生者は魔王討伐のためにゼレスに行って頂くので、少し特別なことをしています」
「特別なこと、ですか。それは教えたくれはるんですか?」
「えぇ、勿論です。それはギフトをご自身で選んでもらう、ということです。ギフトとは本来ランダムに与えられるのですが、危険な魔王討伐に向かって頂くので、ご自身が納得したギフトを選んでゼレスへと向かってもらいます。そのギフトのリストがこちらです」
女性がそういうと、何もない空間に色々なことが書かれたリストが現れる。
この中からそのギフトっていうのを選べば良いのだろうか。
パッと見た感じ、百近いギフトの名前と説明が書かれている。
どんなのがあるかというと。
【ウェポンマスター】全ての武具を使いこなせる能力。
【マジックマスター】ほぼ全ての魔法を駆使できる能力。
【マーシャルマスター】あらゆる武道を扱える能力。
たくさんの能力が書かれていて、選びきれない。
流し見で確認していると、ひとつのギフトに目が留まる。
【クリエイト】無から物を創り出せる能力。想像するだけで形、機能、質量などを再現できる。但し知らない物を創ることはできない。分解や破損した場合、また一定の時間経過で消滅する。
これってゲームの世界の物でも創り出せるのかな。そうなら無双できるんやない?
直感でこれやと思った。
「決めました」
「もうお決めになったのですか?」
「はい、直感で。そうやないと、迷ってしまいそうやし。この【クリエイト】っていうのでお願いします」
「わかりました。ではそちらのギフトを付与し、イロハさんをゼレスへとお送り致します」
女性が何かを唱え始めると、ウチの足元が青く光りだした。
きっと転移の魔法か何かなんやろ。
「あ、そういえば自己紹介をしていませんでしたね。私はラファエル、女神をしています」
転移直前で女性が何なのかを知った。まさか女神さまやなんてビックリや。いや、まぁそーやな。人を生き返らせるなんて、神にしかできない行為やな。
そんなことを考えておると、光がウチの身体を呑み込んだ。
目を開けると、そこには中世を思わせるような建物が建っており、ウチは立派な御屋敷の門の前に立っていた。
ここが異世界かーっと感慨に浸っていると、不意に声を掛けられた。
「おみゃえ、だりぇだ?」
一人の少女が、門を挟んで屋敷の敷地内から声を掛けてきた。
これがウチと、これから先苦楽を共にする親友のチル、チルロット・ナナニアムとの初めての出会いやった。




