07話 英雄、事件を捜査する1
俺がスブリム王国軍第三兵隊の副隊長になって数日が経った。ここ数日は特に何も起きず、黙々と書類仕事を熟していた。
想像通りではあるが第三兵隊の大半が脳筋であるため書類関係の業務を苦手としていた。これまでは元第三兵隊副隊長のオメガ・ネストが個人プレーで業務を担っていたらしい。膨大な量の書類を一人で片付けていたなんて、そりゃあ休みも欲しくなるわなー。
だが、それは他人事ではないのだ。何故なら今は俺が第三兵隊の副隊長なのだから。
これまでオメガがやっていたことを俺がやらなければならないのだ。バカ真面目に一人で書類の山と向き合っていては身体がもたないだろう。
なので俺は第三兵隊の脳筋共の中から比較的脳筋ではない者を二人、副隊長補佐に任命した。勿論、隊長であるレオナの許可は得ている。
補佐に任命された二人は初めこそ渋ってはいたが最終的には笑顔で副隊長補佐を受け入れてくれた。彼ら曰く「訓練でボコボコにされるよりかは書類と睨めっこしている方がいい」「第三兵隊に居るのは脳筋の武闘派集団だから、俺らみたいなあんま強くない者にはキツい」だそうだ。
それにレオナも隊長室に居ることが多いため「隊長と一緒に居られるから役得」とも言っていた。レオナが隊長室に居るようになったのは最近らしい。なんでも前までは体を動かす方がいいと訓練や巡回などを行っていたそうだ。
因みに副隊長のデスクは隊長室にある。業務を円滑に行うためにそうなっているらしい。……でも前まではレオナは隊長室に居なかったんだよな。円滑もクソもない気がするんだが。まぁ今は隊長室に居てくれるから、隊長のレオナが処理しないといけない書類などは直ぐ取り掛かってくれるから有り難いが。
そんなこんなで今日も副隊長用のデスクに着いて書類を処理している。……、オメガが副隊長の時は一人で処理していたため書類が処理しきれず、溜まりに溜まって山のようになっている。それに加えて、第三兵隊の連中は喧嘩っ早いこともあり、巡回に出ては何かしらのトラブルを起こしている。割合的には三回に一回くらいのペースで。そんなこんなで日々貯まる書類たち。オメガのギフト【思考加速】であっても、一人では処理仕切れない訳だ。
黙々と書類の処理をしていると、レオナが突然ある物をポケットから取り出し耳に当てる。
取り出した物はレシーバーと呼ばれる魔道具だ。二つで一対の魔道具らしくトランスミッターと呼ばれる魔道具に声を掛けるとレシーバーからその声が聞こえるてくる。因みにレシーバーは受信専用とのこと。レシーバーは各隊の隊長が其々に持っていて、その対になるトランスミッターは王城に在り何かあれば報告や呼び出しが掛かってくる。
そんな便利な物もっと有ればと思うのだが、相当に高価なものらしく各隊に配布するの分で手一杯だそうだ。
ん、魔道具とは何かって? 魔道具とは【ギフト】の能力を使い作り出した道具のこと言うそうだ。そしてレシーバーとトランスミッターだが、スブリム王国軍第六兵隊の隊長が創ったそうだ。何でも第六兵隊の隊長は、技術開発局の局長が第六隊長に任命されたとレオナから教えてもらった。第六隊長曰く、第六隊長は副業で本業は技術開発局長なんだとか。
閑話休題。
レオナは通信が終わったらしく耳からレシーバーを離す。
「ユウ、総隊長からの呼び出しだ。何でも王都で問題が発生しているらしい。王城へ向かうぞ」
俺はレオナと王城へ向かうことになった。書類業務は補佐の二人に任せておく。その際二人からブーイングが出たものの、レオナがキッと目を細めると二人は静かになった。この書類の山だ、ブーイングの一つや二つ出るだろう。俺だって二人の立場なら同じことをしただろうに、睨み付けるほどのことだったのか?
レオナと俺は馬車に乗って王城へと向かい、前回と同様に門兵の横を通り過ぎる。だが着いた部屋は前回とは別の部屋であった。前回の部屋は各隊長達が一堂に会して会議が行えるようになっていたが、今回訪れた部屋は個人の執務室のように思える。内装は上等そうなインテリアなどで飾られており、日本の知識で例えるなら社長室とかがこんな感じだろう。
部屋の中には三人の人物が居た。
一人はこの部屋の主であろう豪勢なデスクに着いているレガトゥス・ゴールデン総隊長。残り二人は第五兵隊の隊長チルロット・ナナニアムと副隊長の如月いろはだ。部屋に入るなりレガトゥスが話を始める。
「諸君、先ずは多忙の中集まってくれたこと感謝する。早速で悪いが今回諸君を呼ぶに至った王都で起きている問題を述べよう。今現在、王都に住まう民の失踪が相次いでいる。その為王都の巡回や警らを増やしたのだが原因を掴めずにいる。そこで諸君の隊にはこの事件の原因究明をしてもらう。最近、活躍目覚ましい若手ホープの率いる隊だ。今回もその英才俊秀な実力を見せてくれたまえ、話は以上だ。事件の聞き取り等の詳細を記載したものは第零副隊長のダヨーから貰ってくれ。では諸君の活躍、楽しみにしている」
レガトゥスからの依頼を聞き終わった俺達は、レガトゥスの執務室を後にする。部屋から出ると八柱会議の時にレガトゥスの傍に控えていた初老の執事然としたイケおじが待機していた。
「皆様、こちらが今回の王都住民の失踪に関する詳細書となります。大した情報はありませんが、事件解決に際して御活用下さい」
ダヨーと呼ばれた第零の副隊長から詳細書を貰い、俺達四人は移動する。場所は王城に在る会議室の一つ。
「大した情報はありませんがって、本当に役立つ情報がネーじゃねぇか!」
レオナが紙をクシャっと握り潰し床に叩きつける。だが、レオナの言い分は尤もで詳細が記載されたと言われた紙には事件に役立つ情報という情報は書いていなかった。内容としては「朝、仕事行く時に見かける子供の数が少ない気がする」「ボオス君とモーブ君が喧嘩していた」「ウチの子が床下で猫が暴れてるって言うもんでさ」「行方のわからない子供より、俺たちの子供を一緒に探さないか」などなど、事件の参考になりそうな証言が見当たらない。
「まぁおちつゅけレオニャ、いりゃいりゃしたところょでじょーきょーは良くにゃらにゃい。こにょ紙きりぇが役にたてゃないのは事実りゃが、そりぇはへーわ呆けした第にゃにゃの奴りゃがちょーさしたかりゃだ。先ずはわりぇわりぇの隊の奴りゃに聞き込みちょーさをさせよう」
「それがええんちゃう。王都は広いから捜索する人員は一人でも多い方がええやろ。部下達には決まった箇所を周ってもらって、ウチらは各々が動いて適度に何処かで集合とかして情報交換するみたいな感じでいくんはどうや?」
いろはが出した案に文句がなかったため、肯定する。何故かレオナの眉間に皺が寄っているが、レオナは特に何も言わない。
「ほな一回別れて、部下達に命令を出すため各々の兵舎に戻ろか。ほんで……そやな、正午の鐘が鳴ったら『蒸したジャガイモ亭』に集合ということで」
いろはがこの場をまとめてくれ、スムーズに話し合いが進んだ。
方針が決まったため、俺たちは部屋から出ると各々の兵舎へと戻る。今回は急ぎの為、馬車に乗り第三兵隊の兵舎へと戻る。
異世界に来て、第三兵隊に入って二回目の任務。ここで学ぶものも多いだろう。強くなるためにレオナやいろは、チルロットから多くのことを学ばせてもらおう。第三兵隊への帰路を走る馬車の中、俺は新たな任務に気合いを入れる。




