6話
放課後。
私は彼と2人で下校していた。
「深井さんと同じ電車だったなんて知らなかったよ」
「私も貴方が隣の駅に住んでいるなんて知らなかったわ」
私も驚いた。まさか彼がこんな近くに住んでいたなんて…
「運命だね」
「たまたまよ」
そんな運命は存在しない。
ただの偶然だ。
「深井さん、いつも早く帰っちゃうから知らなかった」
「そう」
「今日の晩御飯どうしようかなー」
「夕食も作ってるの?」
「そうだよ。深井さんは何がいいと思う?」
「私?」
「そう。献立考えるのも大変なんだよね。自分1人なら適当でいいんだけど、人に食べてもらうなら喜んでほしいし」
「確かに献立考えるのは大変そうね。私も聞かれてパッて思いつかなかった。オムライスとかは?」
なんというか……イケメン爆発しろとか心の中で思ってたのが恥ずかしい。
穴があったら入りたいぐらいだ。私なんかよりよっぽど彼はしっかりしている。
「いいね。今日の夕飯はオムライスにするよ」
「そう」
爽やかに微笑んで彼は言った。人の家の献立を提案するというのは変な感じだが、こうやって自分の意見を笑顔で肯定してもらえるというのは少し嬉しい。
「オムライス好きなの?」
「ええ」
オムライスはもちろん卵を使った料理は全般に好きだ。プリンやオムレツ、親子丼なんかもいい。
「きゃっ!」
「おっと、大丈夫?」
「う、うん。ありがとう」
油断した。
会話に集中してて電車の急な揺れに対応出来なかった。
というか……距離が近い…
前に倒れたのを支えてもらったのだから当たり前なのだが、私はいま彼に抱きつくような体勢になっている。
心臓がバクバクとうるさい。なんなんだろうこれは。
おかしい……絶対におかしい。きっと不意に体のバランスを崩して倒れたから驚いただけだ…
決してこの男に抱きしめられてドキドキしているわけではないし……私よりも大きな体に包まれて安心感を感じているわけでもない…
それに変な声も出してしまったし、なんだか色々と恥ずかしい……
「あの、もう大丈夫だから…は…離してもらえると助かります…」
なんとか動揺を悟られないよう落ち着いて話そう…そう思ったのに……上手く喋れなかった。
「あ…う、うん」
私の肩から彼の手が離れていく。
「あ、」
無意識のうちに声を出していた。
「な、なんでもない」
決して名残惜しかったわけではない…
「あ、ありがとう。それからごめんなさい。勢いよくぶつかってしまって。怪我はない?」
「大丈夫、これでも頑丈だから。深井さんこそ大丈夫?」
「うん、大丈夫」
彼のおかげで怪我はしなかった。でも、彼のせいで顔も多分赤くなっているし、心臓もびっくりするぐらいバクバクしている。
「じゃあよかった」
何にもよくない。このままだと私はどうにかなってしまいそうだ。




