5話
気がついたら大島恭司と付き合うことになってしまった。
きっと急な展開に脳がついていかず、考える間もなく返事をしてしまったのがよくなかったのだろう。
とはいえ本当に恋人になったというわけではなくて、期間も1ヶ月とそこまで長くない。
それにその時間が終われば彼も諦めると言っていた。
あとはその言葉が嘘じゃないことを願うばかりだ。
まあ、私が男に惚れることなんてないので、彼は諦めるしかないのだが。
・・・
昼休み。
私は中庭のベンチに腰を落としていた。
「ここオススメの場所なんだ」
隣には大島恭司が座っている。彼に昼食を食べようと誘われたのだ。
一緒にお昼を過ごす必要もないのだが、一応は付き合っていることになっているので了承した。
それに後から文句を言われて交際期間が伸びても困る。
「確かにいい場所ね」
あまり人目につかない私好みの場所だ。
「でしょ。深井さんのお弁当、美味しそうだね。自分で作ってるの?」
「残念ながら私じゃないの。母が作ってくれてるわ」
もちろん作れるに越したことはないのだろうけど、私に料理スキルなんてものはない。
なので、ありがたく母が作ってくれるお弁当をいただいている。
「そうなんだ」
「そういう大島君は?」
「俺? 俺は自分で作ってるよ」
「え…そうなの?」
「あ、意外って顔した」
正直に言うと驚いた。これは偏見なんだろうけど、男子高校生が家事をしてるイメージがあまり湧かない。
人を見た目で判断するのはよくないのだけど、彼自体も毎朝お弁当を作ってるような雰囲気のキャラクターじゃなさそうというのもある。
「ごめん」
「別に大丈夫。俺が自分で作ってるっていうと皆んなそういう反応するから」
「そうね。正直なところ驚いたわ」
「そうだよね。よく言われる」
「毎朝作ってるの?」
「そうだよ」
「凄いわね。どうしてしようと思ったの?」
毎朝お弁当を作るなんて私には出来そうにないし、本当に凄いと思う。
「料理は嫌いじゃないし、少しでも母さんの力になりたいなって。うちは母子家庭だから余計にそう思うのかもしれないけど」
素直に立派だなと思った。なかなかやれることではない。
「そう、なんか凄いわね。私なんかうちのこと全然してないもの」
「別にそんな大したことじゃないよ」
そう言って謙遜したけれど、私の中で彼の評価は上がった。
だからと言って恋愛的な意味で好きになったわけではないけど…




