18話
「お待たせ」
「うんん、そんなに待ってないし。私も待ちたかったから」
今日は恭司が日直の当番だったので、普段よりも帰るのが遅くなったのだ。
「待っててくれてありがとう」
「うん」
待ち時間を好きだと思ったことは今までなかった。けど、不思議なことに彼を待っている時間は嫌な気がしないのだ。
なんだかそれがおかしくて、つい笑ってしまった。
・・・
「だんだんと暑くなってきたわね」
この頃は夕方でも蒸し暑い風が吹いていて少し嫌になる。
「そうだね」
「最近は夏が来るのが早くて嫌になるわ」
「どんどん暑くなるのが昔より早くなってるよね」
「本当にそう。夏が近づいてくるのが憂鬱だわ」
きっと温暖化が進んでいるのせいなのだろう。よく分からないけど。
「夏は嫌い?」
「ええ。暑いのもいやだけど、虫が多くなるから」
「あー、確かに虫が増える季節だよね」
私は夏より冬の方が好きだ。虫もいないし、寒さは服を着込んだり、カイロをつけることで凌げるから。
あと夏とは逆で冬は年々寒くなくなってきている気がする。昔の方が冬が嫌いだった。
「特にハチとセミは本当に無理。ハチは普通に怖いし、セミは羽音が苦手」
だから、この時期になると草木が多い場所はなるべく通らないようにしている。
「ハチは刺されたら命に関わるかもしれないしね」
「うん。見た目も怖いし。あと夏といえば蚊も嫌い」
蚊は本当に大嫌いだ。
「あれだよね、蚊は夜中に耳元で不快な音がして起こされるとイラっとする」
「そうなのよ! それに刺されたら痒くなるし」
あの羽音が嫌すぎる。刺された場所はぷっくりと膨らんで凄く痒くなるし。
「なるべくなら刺されたくないよね」
「うん。もう私の部屋に入ってこないでほしい」
「そっか。にしても、もうそんな時期なんだね」
「早いわよね。私、夏は嫌いだけど、夏休みは大好き」
「夏休みは最高だよね。でも、俺は学校で瑞樹に会えなくなるのは寂しいな」
「それは私も寂しい…」
確かに恭司と会う回数が減ってしまうのかもしれない。
「そしたら、夏休みにも2人であえばいいじゃない…」
私はいつでも空いている。残念ながらカレンダーには何の予定も入っていないから。
「うん、そうしよ。あと電話もたくさんかけるよ」
「ええ。と言っても、夏休みはもう少し先だけどね」
「その前に試験もあるしね」
「それは聞きたくなかったわ」
「それはごめん」
恭司と雑談しながら一緒に歩く帰り道。ぼっちだった私には誰かと帰るという行為に慣れないところが最初はあった。
でもそれが徐々に日常へと変わっていき、今では彼のいない帰り道なんて想像できない。
この変化を私は気に入っている。そしてこの夏、きっと私はまた色々な経験を彼と2人でするのだろう。
そんなことを来年も再来年も思えればいい。隣にいる恭司の顔を見て、ふとそう思った。




